2019-08-11 (Sun)

本日のキーワード : 通貨発行益
シニョリッジ(英: seigniorage, seignorage)、または通貨発行益(つうかはっこうえき)とは、貨幣発行益、貨幣発行特権のことをいう経済用語。
シニョリッジとは、政府・中央銀行が発行する通貨・紙幣から、その製造コストを控除した分の発行利益のことである。
「シニョール」(seignior) とは古フランス語で中世の封建領主のことで、シニョリッジとは領主の持つ様々な特権を意味していた。その中には印紙税収入や鉱山採掘権などもあるが、特に重要なのが貨幣発行益であった。中世の領主は額面より安価にコインを鋳造し、その鋳造コストと額面との差額を財政収入として享受していた。
鋳造貨幣はその地金価値を額面が上回ることが多かったため、シニョリッジを狙って貨幣の偽造が行われることも多かった。また、領主は財政難に対処するために品位を落として貨幣を鋳造するようになった。
本日の書物 : 『日本史に学ぶマネーの論理』 飯田泰之 PHP研究所
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 富本銭プロジェクトに続き、和同開珎においてもその【当初の目論見】を【達成することはできなかった】。
しかし、これをもって一連の営為を未発達な国が背伸びをして【先進国(唐)の真似をして失敗したプロジェクトだったと評価するのは適切ではない】。和同開珎プロジェクトにより、京畿内のみならず、その周辺地域においても【貨幣経済というあらたな経済システムが定着していく】こととなった。

和同開珎銀銭
さらに、貨幣経済の拡大に伴って、和同開珎プロジェクトの【当初の試みとは別の形】で、そして【より現代的な形】で【貨幣発行益をもたらした】と考えられる。

【銅銭】と【銀銭(または銀地金)】の【交換比率を銅高に設定するというプロジェクトは失敗】した。しかし、同年(722年9月)には、銭の使用に関して【あらたな政策が実行】に移される。そのひとつが、【税】を【銭で納める地域】を畿内周辺八カ国(伊賀・伊勢・尾張・近江・越前・丹波・播磨・紀伊)に【拡大】する措置である。

先に説明したように、【貨幣】は【国が発行する商品券としての性質を持つ】。短期的な視点で考えると【政府自身が発行した名目貨幣で何かを買う分には得をする】が、それがすぐに行使される――つまりは【政府に対する支払いに充てられると得分は少ない】。

ちなみに、【当時の政府が自らが発行した銭で購入したもののひとつが労働である】。…
加えて、722年9月制令より【税(調/ちょう)の銭納】の範囲を都の周辺からより広範囲に広げる措置が採られたことで、【銭はさらなる価値の裏付けを得た】。

【蓄銭叙位令】によって【貴族の資産としての価値】を身につけ、【税が銭納化】されたことによって【貴族に限定されない中央政府への支払い手段として用いられる】ようになった。これらの政策によって、和同開珎銭は、次第に【貨幣としての内実を備えていった】と考えられる。…

【民間での銭の流通が活発になる】と、銅銭には【「便利な支払い手段として使用できる」という価値が付与される】ことになる。【税金として支払うことができるだけではなく、一般的な取引の際に用いることができるという「便利さ」が追加される】わけだ。【この便利さによって銭の価値はさらに高まっていく】。
その結果、【銅銭と銅地金の価値は乖離していく】ことになる。

少し時代が下った760年頃…寺院建立にあたっての資材価格の記録に、【銅1斤(きん/約670g)】の値段が【銭50文】であったと記されている。
同時期の銅銭は軽量化していたため、【銅1斤(きん/約670g)の重さ】と【銅銭180枚の重さ】が【ほぼ等しい状態】になっている。一方で、【実際の交換比】は【銅1斤の重さと銅銭50文が等価だった】わけだ。ここから加工費を勘案しても、【和同開珎銭には3倍以上プレミアムがついていた】と解釈できる。ちなみに…、【銅と銀との価格比は1:25】と722年(養老六年)の制令と大きく変わらない割合である。
和同開珎プロジェクトが始まった当初、【価値の基準】となっていたのは【銀】であった。だからこそ、【「銀との比較において銅(銅銭)に高い価値を与える」】プロジェクトとして富本銭・和同開珎の発行が企画されたが、その試みは直接的には成功しなかった。しかし、ここで【銭貨発行の本来の目的】を考えてみよう。【最終的な目標は「銅銭にその銅の価値以上の価値を付与すること」】であり、その【比較対象が銀である必要はない】。

和同開珎銅銭の流通が広がるにつれ、【価値の基準は銀から銭へと移行】していった。その結果、【銭の価値】はそこに含まれる【銅そのものの価値とは乖離】していった。ここにおいて、富本銭以来の【政府の目論見――金属としての価値を超える名目貨幣の創造】という目的が達成されたのだ。

紆余曲折の末、もしくは偶然と幸運の末に古代貨幣がたどった道程は、【公的に発行される貨幣が貨幣であるために必要なもの】を示してくれる。【政府による支払い手段として銭を用いることで社会に銭を供給し、その銭で納税できる制度を整えることで銭の価値を担保する】――これは名目貨幣が流通するために欠かすことのできない条件である。』

政府が発行する「おカネ(貨幣)」は、「政府の借金(負債)」です
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、我が国の歴史である国史の流れの中の「おカネ(貨幣)」に注目し、そこから現代経済学の知見に基づいて検証し、「経済」と「金融」というものを改めて考えていくというテーマで書かれた書物であり、「おカネ(貨幣)」というものが、そもそも何であるのか、ということを理解できるようになる良書になります。

さて、本文の最後のところで、「名目貨幣」という言葉が登場していますが、これは以下のように定義されます。
名目貨幣 : 原材料価値を上回る価値を持って流通する貨幣
商品貨幣 : 原材料価値と貨幣の価値が(ほぼ)等しい貨幣
昨日のところでありましたように、「無文銀銭」という「おカネ(銀貨)」が667年から672年頃に発行されていて、当時のアジアで唯一の銀の「おカネ」であり、しかも計数貨幣(=一定の形式で整えられ、個数・枚数を基準に取引に用いられる貨幣)であったわけですが、

大津市・崇福寺跡出土の無文銀銭(近江神宮蔵)
☆『無文銀銭と和同開珎―日本最古のコイン―』 京都国立博物館HP
その後の、富本銭や和同開珎の発行による当初の目論見は、「銀との比較において銅(銅銭)に高い価値を与える」ことでした。しかしながら、本文冒頭にも書かれていましたように、この計画は失敗に終わります。つまり、民間での流通が拡がらなかったわけです。
ところが、「税を銭で納める地域」を拡大したことによって、次第に「銅銭と銅地金の価値は乖離していく」こととなり、民間における流通の拡大も伴って、結果、「名目貨幣」を創り出すことに成功します。

ここで、名目貨幣は、「原材料価値を上回る価値を持って流通する貨幣」ですから、「おカネ(貨幣)」を発行する政府にとっては、“もの凄く儲かる”と思ってしまうのではないでしょうか?

でも、それは間違いなんです。

このとき、政府が発行する「おカネ(貨幣)」こそが、「政府の借金(負債)」なんです。

もし、分かりにくいようであれば、次のようなお話を考えてみて下さい。
いま、誰かが、①ローンでモノを買う、とします。すると同時に、②将来返済しなければならない借金(負債)が発生します。そして、③返済原資は給料で、④勤める会社の業績が上がれば供与や賞与が増える、⑤だから頑張ってお仕事に励む、という流れがあります。
その「誰か」を「政府」に置き換えてみましょう。
いま、政府が、①「おカネ(貨幣)」を発行し支払いに充てる、とします。すると同時に、②将来返済しなければならない借金(負債)が発生します。そして、③返済原資は税金で、④民間経済が活発になれば税収が増える、⑤だから民間経済が活発になるように経済・金融政策を適切に実施する・・・と、こんな感じになります。
ここで注意する必要があるのが、②の「借金(負債)」は③の「税金」によって相殺される性格のものであるという点です。
私たちは、普通、「借金(負債)」というものを「おカネ(貨幣)」によって返済するものとして理解しています。
でも、「政府」は「徴税権」という唯一無二の特権を国民から与えられていて、「借金(負債)」を「税金」という形で回収し相殺することが認められているんです。ローンでモノを買っておきながら、その「借金(負債)」を他人から「おカネ(貨幣)」を合法的に“回収”して相殺するということが認められているのと同義です。

いかがでしょうか?
「おカネ」というものが一体何であるのかということ、がイメージできましたでしょうか。。。
そうすると、昨年秋からすでに心配されていた「景気後退リスク」が顕在化するなかで、「消費税増税」を勝手に強行しようとする政府の政策は正しいと言えるでしょうか? もちろん、愚策中の愚策に他なりませんが。


☆『景気動向指数(2019年6月)~CI一致指数が急低下。先行き、再び「悪化」への基調判断下方修正リスクも~』第一生命経済研究所

☆『6月の景気後退確率、84・6%へ急上昇--昨年秋からの警戒シグナルが点灯』公益社団法人日本経済研究センター(JCER)

岡本薫明(おかもと しげあき)


☆「消費税は社会保障財源」「国民に理解求める」岡本薫明財務次官インタビュー
続きは次回に♥
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