2019-07-29 (Mon)

本日のキーワード : 重商主義
重商主義(じゅうしょうしゅぎ、英: mercantilism)とは、貿易などを通じて貴金属や貨幣を蓄積することにより、国富を増すことを目指す経済思想や経済政策の総称。
本日の書物 : 『経済で読み解く日本史⑤ 大正・昭和時代』 上念司 飛鳥新社
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 下村は「旧来の金本位制の終わり」と「対ドル固定相場制に基づく【金為替本位制度(ブレトン・ウッズ体制)】へと移行したこと」の意味を正確に理解していました。前述のとおり、もはや【日本円】は、国内の金保有量を気にせず、【増やそうと思えばいくらでも増やすことができます】。

下村治 (アサヒグラフ 1953年9月23日号)
もちろん、それは固定相場制を壊さない範囲内であればの話ですが、…1ドル360円が維持できる範囲内であれば、日本の経済状態に応じて、【日本の都合だけで貨幣量の調節をしてもまったく問題ない】はずです。
もはや、経済成長のために金(ゴールド)をかき集める必要はなくなりました。【政府と日銀】がしっかりと【目標を定め】、【貨幣量を適度に調整】することで【持続的な経済成長ができる時代になった】のです。

下村はこの点を自身の言葉で、「通貨の管理は、単に通貨価値の安定のために行われるべきではなく、国民経済の健全な発展に寄与することをも目標とすべき」(『経済成長実現のために』下村治、宏池会)と述べています。

また下村は、技術革新によって生産性は高まり、日本は2ケタ成長を維持できると考えていました。経済成長を続けることでそうなれば、「所得水準」や「GNP(国民総生産)」で、【欧米にキャッチアップ】することも夢ではありません。

ところが、下村のこうした考えに【都留重人(つるしげと)】をはじめとした官庁エコノミストたちは【反対】しました。特に【都留】は【日銀理論の教祖】であり、1947(昭和22)年の【第一回目の経済実相報告白書の執筆責任者】でした。ちなみに、【都留】はこの【白書作成に当たり、下村の書いた原稿をすべて没にした】と言われています。


都留重人
【都留】は「下村の提唱した【2桁の成長などは不可能】で、せいぜい5、6%がいいところだ」と【主張】しました。1950年代以降の日本の驚異的な経済発展は戦争によって落ち込んだ経済がリバウンドしただけであり、【もうこれ以上は無理だという】のです。【都留】はこの他にも、「戦争のために落ち込んだ谷間から回復する過程での勃興」「永久に続くものではない」など、【ネガティブなことを言いまくっていました】。

まるで民主党政権時代に、「もう日本は成長できない」「デフレの原因は人口減少だ」などと言いまくっていた【ポチノミストや日本ダメ論者みたいなもの】です。

そんなネガティブな意見が経済論壇で吹きすさぶ中、【下村】は【「日本経済はまだ成長の余地がある」と反論】しました。

【都留】は経済企画庁の大来佐武郎(おおきたさぶろう)、日本銀行の吉野俊彦などを引き連れ、【下村に再反論】し【論争に発展】します。これが【戦後最大の経済論争】とも言われたいわゆる【「成長論争」】です。

この論争の肝は、経済成長において技術革新、今の言葉でいうなら【イノベーションをどこまで見込むか】という点にあります。【多くのエコノミスト】は「過去に作られた設備の【生産性はいずれ下がり】、投資利回りは低下する」と考えていました。しかし、【下村】は「【技術革新によって生産性は高まり】、投資利回りは落ちない」ことを見抜いていました。
1958年に【下村】氏が発表した【「経済成長実現のために」という論文】は、後に首相となる【池田勇人(いけだはやと)】の目に留まります。池田は首相就任の前年に「月給倍増論」を表明し、【下村のアイデアを全面的に採用】しました。そして、1960年に成立した【池田内閣】において、【「国民所得倍増計画」】が発表され、実行されることになったのです。

池田勇人
結論的に言えば、【都留などの官庁エコノミストの主張】は【完全に間違い】でした。


1960年代、【日本は平均で10%を超える経済成長を実現】してしまったのです。まさに【下村の予想した通りの展開】でした。かくして【戦後最大の経済論争】は、【下村の完勝】で幕を閉じたのです。』

「おカネ」の理論の出現
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、私たちの日本の歴史を、経済・金融の面を切り口としてみた場合、これまで学校の授業でお勉強させられ、「訳の分からない歴史」でしかなかったものが、普段の日常感覚で国史の流れをスッと、いとも簡単に理解できる、という良書で、また、多くの方々が勘違いしていると思われる「おカネ」というものについて、非常に正しい認識ができるようになる、お薦めの書物の第5巻になります。

さて、前回(→偉大だった某“大蔵省”官僚 ~ それに比べて、今の“財務省”官僚は・・・)に引き続きまして、都留重人(つるしげと)の名前が登場していましたが、彼はバリバリの社会主義者で、当然のことながら、「マルクス経済学」の学者になります(笑) そして、そんな「マルクス主義」に染まった、真っ赤っかな都留などの官庁エコノミストらが、かつて存在していたという事実、さらに、その系譜に連なる連中が現在も多数存在しているという「隠された事実」について、私たち日本人は、もっと知るべきであり、白日の下に晒していかなければなりません💗

それはさておくと致しまして、本日は「おカネ」について、少し考えてみたいと思います。
キリスト教徒(カトリック)によって迫害されていたユダヤ教徒は、11世紀末頃にはすでに「高利貸し」の代名詞となっていました。
13世紀半ば、モンゴル帝国軍の侵入によって国土が荒らされたポーランドは、人口が激減したため、ユダヤ教徒の受け入れを積極的に行うことで、復興を目指しました。そのため、以降、16世紀半ばまでに、世界のユダヤ教徒人口の80%がポーランドに住むようになり、第二次世界大戦の時代まで、ヨーロッパで最大のユダヤ教徒人口を抱える国(地域)となります。

その間(14世紀~15世紀)、「黒死病(ペスト)流行」や「宗教改革」(カトリックと反カトリックとの争い)という重要な出来事がヨーロッパで起こりました。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆ユダヤ人が集まるところで起こっていること ~ ポーランドの例

「黒死病(ペスト)流行」によるヨーロッパ全体の人口減少と、「宗教改革」によって生じたキリスト教徒の分裂・戦争(カトリック対反カトリック)は、新たなる信者の獲得、新たなる富の獲得の欲求をキリスト教徒(カトリック)に生じさせるインセンティブとなり、「反宗教改革」という「カトリック・キリスト教原理主義」を引き起こし、やがて、「大航海時代」(15世紀半ば~17世紀半ば)という植民地獲得競争の時代へと突入することとなります。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆SNSのデマには、ご注意ください! ~ 公式 『 しんぶん赤旗 = SNS 』

☆「生物学」の勃興、それは江戸時代のお話です

そんな時代のヨーロッパにおいて、具体的には1480年頃~1650年頃になりますが、物価水準が急激に上昇しました。つまり、「インフレ」です。

☆『16世紀「価格革命」論の検証』 平山健次郎
その頃、重要な役割を果たしたのが、フランスの法学者・弁護士であった「ジャン・ボダン(1530年~1596年)」です。

ジャン・ボダン
当時の人々は、「なぜ、物価が上昇しているのか(=インフレが起こっているのか)」、その理由が分かりませんでした。モノがどんどん値上がりしている、言い換えますと、これまでと同じように「モノ」が買えない、という状況にありました。人々の目には、悪徳商人(例えばユダヤ教徒)が自分たちの利益のために、何か企んでやったことに違いない(売り惜しみ、価格カルテルみたいなw)と見えることとなり、事実、そのように妄想します。

ウィリアム・シェイクスピア
ちなみに、シェイクスピアの『ヴェニスの商人(The Merchant of Venice)』で、醜い守銭奴としてのユダヤ教徒の金貸しであるシャイロックと、「貿易商(merchant)」であるアントーニオを中心に描かれる架空の物語が知られていますが、それが出版されたのは1600年になります。

シャイロックとアントーニオ
こちらもご参照💗
↓
☆ちょっと何言ってっかわかんない ~ 「鎖国」を孤立政策と勘違いするWikipedia ~ おや?世界が一つだったとでも言うのかしら(笑)

で、お話を元に戻しますと、ジャン・ボダンは、当時の経済の変化で重要なものとして、新大陸から大量に持ち込まれていた金銀に着目しました。余談になりますが、本能寺の変は1580年ですが、この当時の日本の石見銀山(いわみぎんざん)の果たした役割も非常に重要です。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆およそ500年前の世界の基軸通貨は「銀」でした

ヨーロッパへと新しく大量に持ち込まれる金銀は、「おカネ」であり、そのような「貴金属のみを国富」として捉え、その国外への流出を規制し、新たな鉱山開発(植民地におけるものも当然含む)を推し進めることによって、さらなる「国富としての貴金属」を蓄えようとする政策を「重金主義(Bullionism)」と呼びますが、それを受け継ぐ考え方として、「重商主義(mercantilism)」があり、海外との貿易で「貿易黒字」を計上することで、国内における「国富としての貴金属」を蓄えることを目的とし、そのために関税や貿易赤字削減、金銀の輸出禁止、貿易自体の制限などを行う政策になります。
1568年、重商主義者であったジャン・ボダンは、金銀の量と価格水準との関係性を理論化し、「おカネ」の理論である、「貨幣数量説」をまとめました。
それを、さらに一般的な形でまとめたのがイギリスの哲学者のジョン・ロックで、

ジョン・ロック
彼は、その著書において、「王権神授説」を否定し、政治権力の起源を「社会契約(social contract)」にあると唱えました。その中でも注目しておきたいのが、のちにカール・マルクスへと受け継がれる「労働価値説(labour theory of value)」の起源を、そこに見ることができる点です。
(以下は、Wikipediaからの抜粋です)
『 ロックは国家を基礎付けるために自然状態についての考察から始めている。ロックの自然状態では、人間は自然法に従った範囲内において完全に自由な状態にあり、原則的に服従関係がない平等な状態である。ここで導入されている自然法の規範によれば人間には所有権が認められている。この所有権の起源は労働に求められ(労働価値説)、全ての人間が持つもの(自然権)である。もし自然法が認識されずにある人物の権利が侵害されれば、当事者は抵抗することが可能(抵抗権)であり、また第三者であっても制裁を加えることが可能である。この状態を戦争状態にあるとする。
しかし自然状態では「確立され、安定した公知の法」「公知の公平な裁判官」「判決を適切に執行する権力」が欠けている。そのため、所有の相互維持という目的のために、自然法の解釈権(立法権)や執行権(司法権・行政権)を理解力ある一部の人びとへ委譲することで安定的な自然法の秩序をもたらすことができる。ただし政治社会を形成するためには対等な権利を持つ人間による相互の同意が不可欠である。こうして政治的な統一体が成立すると議会という統治機関による多数決ですべての構成員を拘束する立法や行政などの権利を有することができる(議院内閣制)。しかし自然法という前提の帰結として政治社会の立法行為は自然法を逸脱することはできない。
立法権は常設の必要がなく、また立法権と執行権が同一人の手にあると利己的に用いられる恐れがあるため、しばしば分離されることがある(権力分立)。また他国との和戦・締盟・交渉を行う権力を別に連合権(federative)とするが、実際には執行権と統合された組織によって実行される。この三権のうち、立法権が最高権であり、他の権力はこれに従属する。
社会の成員となった個々の人間の権力を社会から取り戻すことはできない。しかしながら、政府が人民の共同の利益から外れ権力を乱用するようになれば、政府はその由来と権限を失い解体されたとみなされ、人民は新しい形態の立法権を定めたり、古い形態のまま新しい人間に立法権を与える権利を持つ。これが人民の抵抗権であり、このことで人間の生命や財産の所有は保障される。』

で、そんなジョン・ロックの理論は、「おカネ」の供給、つまり金銀の流入が増加すれば、「モノ」の価格が上昇し、逆に、「おカネ」の供給が減少すれば、「モノ」の値段も下落するため、いずれにしても「貧乏なまま」になる、だから、「おカネ」の供給(=金銀の流入)の増加を維持しつつ、同時に、他国に比べて自国の「モノ」の値段を高く維持するように、有利な貿易バランスを目指すべきだ、というものでした。

この考え方に対して、当時の多くの重商主義者は疑問を抱きました。
「イギリスで産出されるモノの値段が他国よりも低くなれば、より輸出が増えて、イギリスは儲かるのでは?」
と。
さて、みなさんは、どのように考えられるでしょうか?

実は、ジョン・ロックの理論の根底にあるのは、「物々交換」、「等価交換」という発想です。

「モノ」と「モノ」との交換によって「経済」が成り立っている、であれば、他国よりもイギリスの「モノ」の値段が高ければ、より多くの「モノ」と交換できる、そのためにも、「おカネ」となる金銀の獲得も大切だ、なぜなら、「モノ」の値段を上昇させるからだ、という感じです。

繰り返しますが、みなさんは、どのように考えられるでしょうか?
続きは次回に♥
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