2019-08-09 (Fri)

本日のキーワード : 真正手形主義、内生変数、言い逃れ
責務 : 責任と義務。また、果たさなければならない務め。
本日の書物 : 『「バカ」を一撃で倒すニッポンの大正解』 高橋洋一 ビジネス社
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 日本経済は、第2次安倍政権以降、【大胆な金融緩和・財政出動・成長戦略という「3本の矢」】によって、雇用が回復するなど力強く再生したが、【いまだにインフレ目標の2%は達成できていない】。

【デフレ脱却のための最適解】は、果たしてあるのだろうか。
実は【答えは簡単】で、何度も言ってきたように【金融緩和と積極財政しかない】。【アベノミクスの大胆な金融緩和、そして財政出動をもっともっと行えばいい】のである。

金融政策や財政政策といった【マクロ経済政策】によって【デフレ脱却ができる】というのは、【世界の常識】だ。

デフレとは持続的な物価の下落のことを言うが、【物価を上昇させることができるのは政府と日銀だけ】。つまり、【もっとマネーを出せばいい】。

ただ、どうもそれだけでは飽き足らない輩もいるようで、いろいろな人がもっと有効な手立てはないかと、探してきては【ワケのわからない提案】をする。

【マクロ経済政策以外は効果がない】のに、【意味のない「バカ成長戦略」をあれこれ言ってくる】のだ。


☆成長戦略を振り返る 日本経済新聞

そもそも【「3本目の矢=成長戦略」は、ミクロの政策】だ。【ミクロ政策】で、【成長に寄与するものはほとんどない】。つまり、【デフレ退治にミクロ政策は基本的には効かない】のである。

ただ、ミクロなだけに分野ごとにネタがたくさんあるので、新聞にとってはありがたい。だから、人々が面白がりそうなものをつまんできては推したりするのだが、残念ながら【ほとんどがムダ弾】。【日経新聞が「成長戦略が重要だ」としきりに主張するのは、新聞のネタがないから書いているだけ】だとしか思えない。…

【マクロとミクロを混同する人は多い】が、この違いを理解すれば、“バカの壁”を1枚越えることになる。これだけは間違いない。』

内生変数と外生変数
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、当ブログでも既に何冊もご紹介させて頂いております著者による、理路整然かつ単純明快に、さまざまなテーマについて非常に分かりやすい解説がなされた良書で、もと大蔵省の官僚でもあった著者の視点は、とても参考になることが多く、お薦めの書物になります。

さて、昨日の続きに入る前に、マクロ経済学で、なぜか突然、話題となってしまっている「MMT(現代貨幣理論)」がありますが、その問題点を理解するのに最適なコラムが、現在、ニューズウィーク日本版のサイトで読むことができますので、ぜひ、ご覧頂くことをお勧めさせて頂きます。

☆MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(3)─中央銀行無能論とその批判の系譜|野口旭|ニューズウィーク日本版


それでは、ここからは昨日の続きとなりますが、19世紀初頭のイギリスにおいて行われた、「おカネ」を巡る考え方についての一大論争、「地金論争」について少し確認をしているところになるのですが(※先ほどご紹介させて頂いたニューズウィーク日本版のコラムにも、このお話について書かれていますので、ぜひ御覧下さいませ)、


その論争の焦点は、金(GOLD)との兌換を重要視するのか否か、という部分でした。
実は、当時のイギリスで「インフレ」が大問題となっていて、その責任の所在としてのイングランド銀行(=ポンド紙幣を独占的に発行できた唯一の民間の銀行)が激しく批判されていました。批判していたのが「兌換重視派」で、擁護していたのが「真正手形主義(The Real Bills Doctrine of Money)」による論陣を張った「兌換軽視派」です。
その「真正手形主義」という考え方の信奉者だったのが、元日銀総裁であった白川方明(しらかわ まさあき)で、擁護側は、まさに白川方明の考え方と同じになります。

白川方明



☆緩和策小出し、「偽りの回復」招いた日銀 リーマン直後の議事録公開
つまり、「インフレ」という大問題のその責任の所在としてのイングランド銀行を批判する「兌換重視派」と、「真正手形主義(The Real Bills Doctrine of Money)」を掲げて擁護する「兌換軽視派」との論戦が「地金論争」ということになります。
そして、そこにヘンリー・ソーントンやデヴィッド・リカードらが登場することで、勝敗が決着する(イングランド銀行を批判する「兌換重視派」の勝利)ことになります。ただし、それでも問題は残りました。1814年頃にインフレはピークを迎えますが、それは「ナポレオン戦争(1799年~1815年)」という要因が大きく寄与していたためで、その後デフレに転換し、1821年に兌換が復活して1830年頃までデフレが続くことになります。

ヘンリー・ソーントン

デヴィッド・リカード
さて、ここからがポイントになるのですが、ヨーロッパ中を混乱に陥れたナポレオン戦争によって、供給の制約や生産能力の限界を超える超過需要の発生により、「モノ」に対する需要過多となっている状況で、際限なく「おカネ」を供給すれば、悪性インフレが生じることになります。何故ならば、供給を増やそうとしても、既にその能力が限界に達している状況では、「モノの価格」が上昇する他ないからです。そのことをもってイングランド銀行を批判したのが、「兌換重視派」でした。
ところが、イングランド銀行を擁護する「兌換軽視派」は、「真正手形主義(The Real Bills Doctrine of Money)」を掲げたわけですが、このことの意味を理解する必要があります。

そのため、少し脱線させて頂きますが、我が国の政策を検討する際の参考となる各種資料を各省庁の官僚らは作成しているのですが、例えば、内閣府の計量分析室では計量経済モデルを用いて試算した資料を提供しています。

☆計量経済モデル及び試算関係資料 内閣府HP
で、その内閣府ホームページの該当部分をご確認頂きますと、次のように、「数学の世界」が目の前に拡がってきます💗





ここで、「内生変数」と「外生変数」という言葉が確認できるのですが、「内生」と「外生」って、どういう意味で、どう違うのでしょうか?

それが分かると、「真正手形主義(The Real Bills Doctrine of Money)」を掲げイングランド銀行を擁護した「兌換軽視派」の姿と、同じ論法(=屁理屈)で日本銀行の数々の失策を擁護する連中の姿が、極めて相似しているということが理解できるようになり、我が国の長期経済停滞の根本原因とその構造が簡単に証明できるようになります(笑)


例えば、上の「潜在GDP」を求める方程式は、変数リストから該当変数を当てはめて書き直してみますと、次のようになります。
log(潜在GDP)=(全要素生産性)+(1-潜在労働分配率)×log(潜在資本ストック×潜在稼働率)+(潜在労働分配率)×log(潜在就業者数×潜在労働時間)
※「全要素生産性」は対数になります。
ここで、文字の色が青色のものが「内生変数」で、赤色のものが「外生変数」になります。そのことは、変数リストにも明記されていて、誰にでも確認できますのでご覧になってみて下さい。
で、「内生変数」というのは、要するに「未知数」で、どうなるのかわからない変数になります。他方で、「外生変数」というのは、「任意の数」です。
さきほどの潜在GDPの式ですとややこしいので、もっと簡単に表現致しますと、次のような方程式があったときに、
Y = aX + b
「Y」が「内生変数」で、「X」が「外生変数」、そして「a、b」は定数になりますが、内閣府や経済学者が経済モデル(=つまり数学の方程式)を作成し、様々なシミュレーションを行うのは、「未知数」である「内生変数」を求める(つまり、Yを求める)ためであり、より好ましい「Y」を導くために、前提条件としての「外生変数」がどのような数であれば良いのだろうか、ということを考え、分析し、最適な解を求めようとしているわけです。
お話を元に戻しますと、当時、貨幣の過剰発行によって、悪性インフレを引き起こしていたイングランド銀行も、また、「真正手形主義(The Real Bills Doctrine of Money)」を掲げイングランド銀行を擁護した「兌換軽視派」も、はたまた、自らの犯した数々の失策を言い逃れする日本銀行も、
Y = aX + b
そもそも「X」も「内生変数」だから、「我々にはやれることがない」と宣(のたま)わったんです(笑)

ここに問題の本質があります。ニューズウィーク日本版のコラムにも、そのことがハッキリと書かれていますので、ぜひとも御覧下さいませ💗
ということで、本日はここまでとさせて頂きます。
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