2022-12-09 (Fri)

こちらは、以下の 『ZeroHedge』 さん記事の翻訳となります。
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☆What's Behind The Explosion In 0DTE Option Trading
ここ数週間、0 DTE (0-days to expiry / zero days to expiration)、つまり満期まで 24 時間未満のオプションがかつてないほど爆発的に増加していることが話題になっているが、これは、わずかな市場の変動にさえ賭けることができる非常にレバが高い方法になっている (もちろん、この 1 ヶ月は非常に大きな市場の変動を経験したので、損益への影響となると 100 倍以上に拡大すると想像される)。
先週は、ゴールドマンのデリバティブ・ストラテジスト、フィッシュマン氏が、「最も取引量が増えているのは超短期取引のオプション」 であり、「想定元本で見ると、満期まで 24 時間未満の S&P 500 オプションは現在指数の取引量の 44 %を占めており、過去 1 ヶ月の 1 日平均想定元本は 4,700 億ドルに達している」 と説明しているのを紹介したばかりだ。

ほぼ同時期に、JP モルガン (JPM) のクオンツ担当のペン・チェン氏もこの興味深い話題を取り上げ、S&P 500 (SPX) の満期まで 0 日 ( 0 DTE) オプションの取引量の増加が多くの人々の関心を集めていると書いている。
最初のレポートは、SPX 指数オプションの 0 DTEに焦点を当て、1) フローはリテール主導ではない、2) 注文フローは売り手主導に偏っている、3) 0 Dオプションのマーケットインパクトを測定するための枠組みを提唱している、ことを明らかにした。2 つ目のレポートでは、0 Dオプションのトレーダビリティ (取引可能性) に注目している。
まず、顧客のいくつかの質問に対するペンの回答から見てみよう。
Q1 : リテール・トレーダーが出来高を増やしているのでしょうか?
JPM のリテール分類アルゴリズムによれば、0 DTEオプションの全市場出来高の約 5.6 %がリテール成行注文によるものです。これは、SPX オプション全体の平均 ( 3.3 %) よりは高いかもしれませんが、フローを支配しているとは言い難い状況です。
ペン氏によれば、0 DTEオプションの小口取引の数が多いことから、0 DTEオプションのリテール活動を過剰に見積もりがちだとのことだ。しかし、アルゴ取引の普及により、取引サイズはもはやリテールか機関投資家かを判断する良い指標とはなっていない。さらに、0 DTEの平均取引サイズは、ほとんどの場合、通常のオプションよりも小さくはない。例えば、0 DTEオプションの平均取引サイズは、全 SPX オプションの 5.7 枚に対して 3.6 枚となっている。しかし、図 2 が示すように、0 DTE と通常のオプションの取引サイズの分布は、非常に右側のテイル (最大の取引) を除いて、ほとんど区別が付かない。

Q2 : これらのオプションは売買され、満期まで保有されているのでしょうか?
0 DTE オプションのすべての利益の出た取引の傾向を推定したところ、ペンは売りと買いのどちらかに圧倒的に偏っていることは確認できなかった。取引量が多いにもかかわらず、アンバランスになる取引はごく一部であり、そのほとんどが純然たる売り物である。さらに、JPM の推定では、満期まで保有されるオプションは全体の 6 %程度にとどまっている。

Q3 : 0 DTEオプションの取引は市場を動かすのでしょうか?
0 DTEオプションは非常に高い頻度で取引されているため、そのデルタヘッジ行動は非常に予測しにくくなっている。したがって、0 DTE オプションのガンマは、より長い期間のオプションのガンマよりも意味が薄いと言える。その代わりに、JPM のストラテジストはデルタのマーケットインパクトに注目している : 彼は、市場の取引時間 (午前 9 時 30 分 ~ 午後 4 時) を 5 分単位で区切った。0 DTE のすべてのオプション取引には推定取引方向が割り当てられ、取引開始時のデルタが 5 分単位で集計される。これらの集約されたデルタは、同じ時間帯の S&P 500 のリターンと合算される。これら 2 つの量を回帰すると、0 DTE オプションのデルタのアンバランスから発生するマーケットインパクトが分かる。この関係は図 5 で見ることができ、正の傾きは、0 DTEデルタから SPX に何らかの市場インパクトが実際に存在することを示唆している。つまり、JPM は過去 1 ヶ月の 5 分間のマーケットインパクトは [-0.6% , +1.1%] の間であると推定している。

このようなことを踏まえて、チェン氏は次に 0DTE 取引の取引コスト分析と収益性について考察している。
取引コスト分析
Q4 : 0 Dオプションの取引は、より長い期間のオプションよりも割高なのでしょうか、また割高だとしたらどの程度なのでしょうか?
10 月の通常取引におけるティック・レベルのデータを用いて、アット・ザ・マネー (ATM) の 0 Dオプションの取引コストを測定しました。具体的には、取引開始時に |delta| が [0.45 , 0.55] の間にあるオプションをフィルタリングし、ちょうど中央値で取引されているものを除外しました。比較のために、満期まで 1 日のオプションについて同じ分析を実行します。下図は、取引された水準と中央値での差として定義される平均実効スプレッド (average effective spread) を、取引サイズ別に示したものです。10 枚以下の取引では、取引コストは取引サイズに対して比較的不変です。ただし、これらの取引では、0 Dオプションの取引コストは1 Dオプションの 3 倍となっています。

具体的には、10 単位以下の取引 (全取引の 95 %) では、0 Dオプションの出来高加重実効スプレッドは約 0.35 ベガ となります。5 %の大口取引では、実効スプレッドは 0.65 ベガとなります。これに対し、1 D オプションの平均実効スプレッドは、全取引の下位 95 % ( 11 枚以下) では約 0.11 ベガに過ぎず、上位 5 %の取引では 0.66 ベガとなります。
日中プロフィールを見ると、0 D オプションの実効スプレッドは一日中大きなボラティリティがあります。マーケットオープン時に顕著なボラティリティが見られ、15:00 以降は満期までの時間が 0 に近づくにつれて再びボラティリティが大きくなります。1 Dオプションのプロフィールは、はるかに良好な挙動を示し、日中の季節性 (シーズナリティ/Seasonality/特定の定期的な間隔で発生する変動のこと) もほとんど見られません。

収益性
上記 Q 2 で指摘したように、0 Dオプションの多くはエンド・ユーザーによる純売りが行われています。このことは、エンド・ユーザーがこれらのオプションをどのように利用しているのか、という疑問を生じさせます。私たちは、これらのオプションは、ボラティリティ・アービトラージ・トレーダーよりも、むしろ、高頻度のディレクショナル (方向性) ・トレーダーによって利用されているのではないかと考えています。これは、以下の分析に基づくもので、アウトライト・オプション (スプレッド取引や他のタイプのオプション戦略の一部ではない、単に個別に売買されるオプションのこと) のリターンは利益を生みますが、ボラティリティ・プレミアム戦略は利益を生まないことが分かっています。
まず、0 Dオプションのエンド・ユーザーが、ビッド・アスク・スプレッドを支払って取引を行うと仮定して、アウトライトのパフォーマンスを考えてみましょう。ここでは、ATM オプション (取引時の |delta| が 0.45 から 0.55 の間) に限定して分析を行いましょう。図 4 は、取引開始直後の推定損益のパフォーマンスを、1 分後と 10 分後に取引されたオプションのベストビッドまたはベストオファーに基づいて示しています。これらの取引レベルの損益は、その後、1 日の出来高加重平均に集約されます。注目すべきは、パフォーマンスが高いだけでなく、10 分足の損益の 3 分の 2 が最初の 1 分間で獲得されていることです。さらに、これらの取引を期限まで保有すると収益性は消失します。これは、0 Dオプションが満期まで保有される可能性は低いという仮説をさらに支持するものです。
その一方で,マーケット・ メーカーが注文フローに流動性を供給し、デルタをヘッジアウトすると仮定すると、その推定損益は取引開始の 1 分後 と 10 分後に図 5 に示されるようになります。これらも強いパフォーマンスを示しており、注文フローの逆のポジションを取ることによってボラティリティ・プレミアムが捕捉されることを示唆しています。デルタヘッジした場合とヘッジしない場合のパフォーマンスの差は、0 Dオプションのエンド・ユーザーがボラティリティ・アービトラージ・トレーダーである可能性は低いことを示唆しています。

まとめると、JPM は、0 DTEオプションの取引コストは 1 Dオプションの取引の最大 3 倍であることを発見した。しかし、0 DTEオプションのエンド・ユーザーは、拡大したビッド・アスク・スプレッドを考慮しても、方向性のある高頻度取引戦略から利益を得ているようだ。つまり、従来の HFT (高頻度取引/High Frequency Trading) による注文フローのフロント・ランニングが 10 年前と比較してはるかに収益性が低下した現在、HFT は 0 DTEなどの市場反射的スキームに頼って収益を上げざるを得なくなっているのである。
同時に、マーケット・メーカーはビッド・アスクの拡大により流動性を積極的に供給し、デルタヘッジされたポジションからシステム的に利益を得ることができるようになったのである。
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