2022-06-06 (Mon)

本日のキーワード : 隷従への道、ハイエク、自由主義、岸田文雄、ウクライナ、ポーランド、ガリツィア、ユダヤ人
NATO vs Russia: What Happens Next
NATO対ロシア : 次に起こること ①

Three months after the start of Russia’s Operation Z in Ukraine, the battle of The West (12 percent) against The Rest (88 percent) keeps metastasizing. Yet the narrative – oddly – remains the same.
ウクライナにおけるロシアの 「オペレーション Z 」 の開始から 3 カ月、「西側」 ( 12 %) と 「その他」 ( 88 %) の戦いは、ますます広がりを見せている。しかし、奇妙なことに、そのストーリーは変わっていない。
On Monday, from Davos, World Economic Forum Executive Chairman Klaus Schwab introduced Ukrainian comedian-cum-President Volodymyr Zelensky, on the latest leg of his weapons-solicitation-tour, with a glowing tribute. Herr Schwab stressed that an actor impersonating a president defending neo-Nazis is supported by “all of Europe and the international order.”
月曜日、世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ会長はダボスから、ウクライナのコメディアン兼大統領であるウォロディミル・ゼレンスキーが兵器要求ツアーの最終行程にあることを紹介し、熱い賛辞を贈った。シュワブは、ネオナチを擁護する大統領になりすました役者が、「ヨーロッパ全体と国際秩序」 によって支持されていると強調した。

クラウス・シュワブとパペット・キシダ
He means, of course, everyone except the 88 percent of the planet that subscribes to the Rule of Law – instead of the faux construct the west calls a ‘rules-based international order.’
彼は、言うまでもなく、欧米が 「ルールに基づく国際秩序」 と呼ぶ偽りの枠組みではなく、「法の支配」 を信奉する地球上の 88 %の人々を除くすべての人々のことを指しているのである。
Back in the real world, Russia, slowly but surely has been rewriting the Art of Hybrid War. Yet within the carnival of NATO psyops, aggressive cognitive infiltration, and stunning media sycophancy, much is being made of the new $40 billion US ‘aid’ package to Ukraine, deemed capable of becoming a game-changer in the war.
現実の世界に目を向けると、ロシアはゆっくりと、しかし確実に、「ハイブリッド戦争の芸術」 を塗り替えている。しかし、NATO のサイコパス、積極的な世論誘導、メディアのおべんちゃらのカーニバルの中で、ウクライナに対するアメリカの 400 億ドルの新たな 「援助」 パッケージが、戦争のゲームチェンジャーになる可能性があるとされ、大いに注目されている。
This ‘game-changing’ narrative comes courtesy of the same people who burned though trillions of dollars to secure Afghanistan and Iraq. And we saw how that went down.
この 「状況を一変させる」 話は、アフガニスタンとイラクの安全のために何兆ドルも費やしたのと同じ人たちの好意によるものだ。そして、我々はそれがどのように終わったかを目の当たりにした。
Ukraine is the Holy Grail of international corruption. That $40 billion can be a game-changer for only two classes of people: First, the US military-industrial complex, and second, a bunch of Ukrainian oligarchs and neo-connish NGOs, that will corner the black market for weapons and humanitarian aid, and then launder the profits in the Cayman Islands.
ウクライナは国際的な腐敗の象徴である。この 400 億ドルは、2 つの集団の人々にとって画期的なものになる可能性がある。第一にアメリカの軍産複合体、第二にウクライナのオリガルヒやネオコン系 NGO が武器や人道支援物資の闇取引を行い、その利益をケイマン諸島で洗浄することができるようになるからである。
A quick breakdown of the $40 billion reveals $8.7 billion will go to replenish the US weapons stockpile (thus not going to Ukraine at all); $3.9 billion for USEUCOM (the ‘office’ that dictates military tactics to Kiev); $5 billion for a fuzzy, unspecified “global food supply chain”; $6 billion for actual weapons and “training” to Ukraine; $9 billion in “economic assistance” (which will disappear into selected pockets); and $0.9 billion for refugees.
400 億ドルの内訳は、87 億ドルがアメリカの武器備蓄の補充 (つまりウクライナには全く渡らない)、39 億ドルが USEUCOM (アメリカ欧州軍 / キエフに軍事戦術を指示する 「オフィス」 )、50 億ドルが曖昧で特定できない 「グローバルな食糧供給チェーン」、60 億ドルが実際の武器と 「トレーニング」、90 億ドルが 「経済支援 (これは特定の人々の懐へ消えていく)、9 億ドルが難民への支援であることが明らかになっている。

US risk agencies have downgraded Kiev to the dumpster of non-reimbursing-loan entities, so large American investment funds are ditching Ukraine, leaving the European Union (EU) and its member-states as the country’s only option.
アメリカのリスク評価機関はキエフを不良債権のゴミ箱に分類したため、アメリカの大手投資ファンドはウクライナを見捨て、欧州連合 (EU) とその加盟国だけがウクライナの唯一の選択肢となった。
Few of those countries, apart from Russophobic entities such as Poland, can justify to their own populations sending huge sums of direct aid to a failed state. So it will fall to the Brussels-based EU machine to do just enough to maintain Ukraine in an economic coma – independent from any input from member-states and institutions.
ポーランドなどロシア嫌いの国は別として、破綻国家に巨額の直接援助を送ることを自国民に正当化できる国はほとんどない。そこで、ブリュッセルを拠点とする EU の組織が、加盟国や加盟機関の意見とは無関係に、ウクライナの経済的昏睡状態を維持するために必要なことだけを行うことになる。
These EU ‘loans’ – mostly in the form of weapons shipments – can always be reimbursed by Kiev’s wheat exports. This is already happening on a small scale via the port of Constanta in Romania, where Ukrainian wheat arrives in barges over the Danube and is loaded into dozens of cargo ships everyday. Or, via convoys of trucks rolling with the weapons-for-wheat racket. However, Ukrainian wheat will keep feeding the wealthy west, not impoverished Ukrainians.
これらの EU の 「融資」 (ほとんどが兵器輸送の形だが) は、キエフの小麦の輸出によっていつでも返済することができる。ルーマニアのコンスタンツァ港には、ウクライナの小麦がドナウ川を渡って到着し、毎日何十隻もの貨物船に積み込まれている。あるいは、小麦と交換する武器を積んだトラックの車列を経由して、である。しかし、ウクライナの小麦は、貧しいウクライナ人ではなく、裕福な欧米の人々を満たし続けることになる。
Moreover, expect NATO this summer to come up with another monster psyop to defend its divine (not legal) right to enter the Black Sea with warships to escort Ukrainian vessels transporting wheat. Pro-NATO media will spin it as the west being ‘saved’ from the global food crisis – which happens to be directly caused by serial, hysterical packages of western sanctions.
さらに、NATOはこの夏、黒海に入る神聖な (法的ではない) 権利を守るために、小麦を運ぶウクライナの船舶を護衛する軍艦を使った、別の怪しげなサイコパスを思いつくだろう。親 NATO のメディアは、欧米が世界的な食糧危機から 「救われた」 かのように報道するだろう。これは、欧米の一連のヒステリックな制裁措置が直接の原因である。




☆『NATO vs Russia: What Happens Next』 The Unz Review • An Alternative Media Selection
☆投資家サーベイ結果発表 「岸田政権、支持しますか?」
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 【過去に文明が発展したのは、人格を持たない市場の力に人間が従ってきたから】である。もしそうなっていなかったら、これほどまでに発展することはなかっただろう。言い換えれば、【そうした力に従うことによって、誰一人完全には理解できない偉大なものの構築に人間は日々貢献してきたのである】。人々が従ってきたのは、いまや迷信と見なされがちな信念のためか、謙虚だったからか、古い経済学理論を鵜呑みにしたせいかは問題ではない。【重要】なのは、宗教が呼び覚ます【畏敬の念】だとか、あるいは経済学への素朴な【尊敬に基づく謙虚な気持ち】からなら、【よくわからない力に従わざるを得ない状況を受け入れやすいこと】である。【これに対して、そのような事態を合理的に理解するのははるかにむずかしい】。【理性で理解できないことは誰もやらない】のであれば、現代の複雑な文明を維持するためだけでも、すべての人がいまとは比べものにならないほどの知性を備えていなければなるまい。

【自分に理解できない力には従わない、従うのは頭のいい人が下した決定だけだ、という態度】は、【幼稚で誤った合理主義】に基づいている。なぜ幼稚なのか、説明しよう。まず、【複雑な社会において多種多様な個人がもたらす作用を計画的に調和させようとすれば、考慮すべき要素があまりに多く、いかに頭のいい人間でもそれを完全に把握するのは不可能だということ】が【わかっていない】。また、【いまの社会を壊すというのでない限り、市場の力 (それがいかに非人間的で不合理であろうとも) に従う以外の道は一つしかないということ】も、【わかっていない】。【それは、誰かの権力に従う道である】。しかし【その権力は恣意的であり、市場の力に劣らず制御不能】だ。人々は、いま感じている面倒な制約から逃れようとするあまり、これに代わって【必ず押し付けられることになる独裁体制の制約が見えていない】。だが【新たな制約は、もっとおぞましいもなになる】だろう。』

ポーランド・ユダヤ人の 「議会シオニズム」
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、資本主義を研究する学問である経済学において、偉大なる経済学者の一人であるフリードリヒ・ハイエクが、ナチズム (あるいはファシズム) と社会主義・共産主義の類似性を明らかにしつつ、 それらの集産主義体制が必然的に全体主義へと至ってしまう危険性について警鐘を鳴らした、非常に有名な書物で、本書を通じて、『 「法の支配」 に基づく自由民主主義』 がいかに大切なものであるのかを改めて理解することができ、財務官僚如きにコントロールされ、「法の支配」 を無視した勝手な決定を次々と行っている (例 : ウクライナへの軍事物資支援 = 戦争行為)、トコトン無能な “岸田政権” も、実は、ハイエクが警鐘を鳴らしたものに、まさしく繋がっているという現状が良く分かるようになる、当ブログお薦めの良書になります。無能で危険極まりない岸田一派は、政権のみならず、政界そのものから抹消することが、私たち日本国民の喫緊の課題となりますので、是非広く日本国民の皆様にお読みいただきたいと思います。

それでは本日も、いつものように、直近の「致死率」を確認しておきましょう。
(死亡症例数)÷(感染症例数)=(致死率)
※( )内は前回の数値

☆Coronavirus COVID-19 Global Cases by Johns Hopkins CSSE
アメリカ : 1,004,730(1,004,719)÷83,984,472(83,979,980)=0.0119・・・(0.0119) 「1.19%(1.19%)」

イタリア : 166,569(166,542)÷17,388,877(17,373,741)=0.0095・・・(0.0095) 「0.95%(0.95%)」

日本 : 30,556(30,537)÷8,804,886(8,784,188)=0.0034・・・(0.0034) 「0.34%(0.34%)」

さて、これまでの流れを、簡単に確認しておきますと、まず、出発点として、カール・マルクス (1818 - 1883) が生まれる約 200 年ほど前の時代 (日本で言えば、戦国時代から江戸時代初期にかけての時代) に、ドイツの神秘主義者であるヤーコプ・ベーメ (ヤコブ・ベーメ、1575 - 1624) という名の人物がいて、その後の 「ドイツ思想」 に決定的な影響を与えた 「キリスト教神智学 (Christian theosophy) 」・「ベーメ神智学 (Boehmian theosophy) 」 なるものが世に生まれることになります。(詳しくはこちらから💓)

ヤーコプ・ベーメ(ヤコブ・ベーメ)
そのベーメの言っていたことというのは、次のようなものでした。
世界は本来壊れているものであり、それを直すことができるのは正しい者だけである (詳しくはこちらから💓)
そして、その影響を受けたのがプロイセン (ドイツ) の哲学者イマヌエル・カント (1724 - 1804) で、彼が言っていたことは、次のようなものでした。

イマヌエル・カント
たとえ世界を直すことができなくても、私たちは常に世界を直すことができると仮定して行動しなければならない (詳しくはこちらから💓)
また、ドイツ観念論を代表する思想家ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル (1770 - 1831) も影響を受けていて、そんな彼が言っていたことは、次のようなものでした。

ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル
世界が固定されていたとしても、私たちは無意識のうちに分裂を起こし、世界が再び崩壊し始めることになる (詳しくはこちらから💓)
で、この流れを受け継いでいるのがカール・マルクスであり、ウラジミール・レーニン (1870 - 1924) で、彼らが言っているのは次のようなことです。

カール・マルクス
私たちには、世界を壊したいという衝動はない。もし私たちが世界を壊すとすれば、それは私たちが社会とその主人たちからそうすることを学んだからである

ウラジーミル・イリイチ・レーニン
われわれは、世界を固定するために、意識の統一を強行しよう (詳しくはこちらから💓)
このように、ドイツで生まれた 「キリスト教神智学 (Christian theosophy) 」 ・ 「ベーメ神智学 (Boehmian theosophy) 」 を出発点として、その後、人為的に造り出された “幻想” であるところのマルクス主義・共産主義・社会主義という類の妄想が生み出されることとなります。ここで重要な点は、そもそも全知全能なる神が創り賜うた世界にあって、なぜ悪が存在するのか、という疑問から生じた 「ベーメ神智学 (Boehmian theosophy) 」 が、ユダヤ・キリスト教的 “善悪二元論” をより一層強化し、世界を完全に良くするために 「悪なるもの」 を消し去らねばならない、といった浅はかな思考へと陥る人々を生じさせたことです。多くの一般的な人々も陥りやすい誤った思考ですが、特に 「極左おパヨク」 と呼ばれる連中は、その影響をもろに受けてしまうほどの 「おバカ」 で、さまざまな “アイデンティティ” を次から次へと粗製濫造することで、ユダヤ・キリスト教的な 「贖罪(しょくざい)」 の対象物として “罪” を創り出し、その罪に対する償 (つぐな) い・贖 (あがな) いを果たねばならない、と妄信させることによって、「寡頭制 (oligarchy/オリガルキー)」 の下で、人々に対して自己抑圧的な態度の徹底を促し ( ← これが、ポリコレw)、人々の “自由” を奪う極めて 「権威主義的な統制社会の再構築」 を目指す連中の思う壺となっていて、それはまさに現在、私たちが普通に目にすることができる状況にあります。つまり、もはや隠そうともしていない、という状況にあるということです。

その 「寡頭制 (oligarchy/オリガルキー)」 については、ドイツ出身の社会学者・歴史学者かつマルクス主義者であり、エリート理論の信奉者で、さらにはファシズム (全体主義者) でもあったロベルト・ミヒェルス (ロベルト・ミヘルス) が提唱した仮説である 『寡頭制の鉄則』 (iron law of oligarchy) を確認をしてきましたが、そこにもやはり 「キリスト教神智学 (Christian theosophy) 」 ・ 「ベーメ神智学 (Boehmian theosophy) 」 の影響を見ることができます。(詳しくはこちらから💓)

ロベルト・ミヒェルス(ロベルト・ミヘルス)
また、「寡頭制 (oligarchy/オリガルキー) 」 と同根の言葉である 「オリガルヒ (oligarch) 」 につきましても、ロシア (詳しくはこちらから💓) やウクライナ (詳しくはこちらから💓) の事例から、そこには少なからぬ 「ユダヤ人 ( = ユダヤ教徒)」 (こちらもご参照💓) が存在していることも判明しました。

さらには、ウクライナとユダヤ人 ( = ユダヤ教徒) と特異な関係を、ウマン (ウーマニ) 巡礼の形成の歴史を通じて確認しました。 (詳しくはこちらから💓)

そこで、現在 “ユダヤ人” (民族としては定義され得ない、単なる宗教信者のグループ) という存在に着目し、より一層理解を進めるために、様々な論文を見ているところとなります。

☆『ポーランド・シオニズムの統合問題 ―1920年代を中心に―』安井 教浩

それでは早速、続きを見て参りましょう。
『 2 ポーランド・シオニズムにおける 「国内政策」 と 「民族的郷土」 の建設
戦間期ポーランド・シオニズムのディアスポラでの活動、ポーランド・シオニストの表現を用いれば 「国内政策」 (polityka krajowa) の特徴をなしているのは、ポーランドの議会政治に参与しようとする強い志向性である。未だ国境が定まらない情勢下で 1919 年に活動を開始した憲法制定議会では、すでにシオニストも含めて 11 名のユダヤ人議員が自らのクラブを結成して旺盛な活動を見せていた。しかし、「議会シオニズム」 とも揶揄されるシオニストによる本格的な議会政治への関与が始まるのは、ヴィルノや東ガリツィアのシオニストを迎えて臨んだ 1922 年 11 月の第一議会選挙からである。この選挙の結果、ユダヤ人は下院に 35 議席 (総議席数 444 )、上院に 12 議席 (総議席数 111 ) を獲得し、そのうちの上下両院合わせて 46 名が 「ユダヤ議員団」 を結成する。この議員団の主導権を握ったのは 20 名の議員を擁した一般シオニストであった。とりわけ、東ガリツィアにおけるウクライナ人の選挙ボイコットもあって、予想を越える 15 名もの議員を送り込むことに成功した東ガリツィア・シオニストは議員団における一大勢力を成した ( 4 )。
ところで、1920 年代におけるポーランド・ユダヤ人の政治は、ふたりのシオニスト、すなわち王国の指導者であるイザーク・グリュンバウム (Izaak Grünbaum) と東ガリツィアの指導者レオン・ライヒ (Leon Reich) との対立を軸として展開されたといっても過言ではない。同い年 ( 1879 年生まれ) のグリュンバウムとライヒは、ことごとに対照的な政策を追求した。例えば、グリュンバウムは、第一議会選挙に際し、ドイツ人、ウクライナ人、ベラルーシ人、ロシア人の諸党派に呼びかけて統一選挙リスト 「民族的少数派ブロック」 を組むことに成功し、その後の議会活動においても同ブロックの結束に努め、ポーランド政府に対峙しようとした。一方、ライヒの目からすれば、グリュンバウムの戦術はいずれもポーランド人社会を不用意に刺激し、ユダヤ人への敵意をやおら煽るものでしかなかった。ポーランド人とウクライナ人との狭間にあって苦悩してきた東ガリツイア・ユダヤ人を代弁するライヒは、他の民族的少数派との連携に関しては常に慎重であろうとし、政府との対決ではなく、むしろ和解・協調の機会を模索していく。こうした両者の立場の隔たりは、合法的な政治活動の経験が浅く、むしろ革命的な雰囲気の中で政治を学び、掲げる要求の実現に関してもともすれば非妥協的なロシア領のシオニストと、広範な自治を享受する中で、ユダヤ人も議会政治を経験し、政治的妥協点を粘り強く見出していく手法に慣れたオーストリア領のシオニストとの、分割期以来の政治的伝統の相違であるとも言える。
シオニズムの両雄の対決は、ユダヤ議員団の結成時から始まった。議員団の総裁への就任を強く望むグリュンバウムに対して、東ガリツィアのシオニスト議員は強く反発し、この問題は、結局、西ガリツィア・シオニストの指導者オズヤシュ・トーン (Ozjasz Thon) が就任することに落ち着いたが、グリュンバウムの不満は燻りつづける。しかし、1923 年 12 月になると、ライヒが正統派の 「アグダ」 など非シオニストの諸党派の支持も得て総裁に就任し、以後、「議員団」 の主導権は東ガリツィア・シオニストの手に移った。
一方、「民族的郷土」 の建設に関連して、1922 年に世界シオニスト機構内部で始まった 「ユダヤ機関」 をめぐる議論は、王国およびクレスィのシオニスト (以下 「王国シオニスト」 と記す) の間に深刻な分裂を引き起こすことになった。第 13 回世界シオニスト会議の開催を前にした 1923 年 6 月、ワルシャワで王国シオニストの大会が開催されたが、それは 「ユダヤ機関」 に非シオニストのユダヤ人をも招き入れることを構想する世界シオニスト機構総裁ヴァイツマンの立場を支持するグループと、それを批判する人々との間での激しい舌戦の場と化し、ポーランドのユダヤ人社会に、王国シオニストにおける 2 つの潮流の存在を強く印象づけることになった。
その後、同年夏にカールスバード (現在のチェコのカルロヴィ・ヴァリ) での開催が予定されている世界シオニスト会議への代表選挙を前にした 7 月、「アル・ハミシュマル」 (Al Hamiszmar: ヘブライ語で 「監視」 の意。以下 「監視派」 と記す) を名乗るグループがシオニスト系の新聞に選挙広告を出し、次のように訴えた。「民族的郷土」 建設の 「途上に出くわす様々な障害との闘いに疲れたわれらが同士の一部は、誰に選ばれたわけでもなく、また誰に対しても責任を負わないような 『ユダヤ機関』、ユダヤ民族からは程遠いところにあって、ユダヤ民族の雰囲気や欲求、願望とは無縁であるような同機関の創設を望んでいる。…彼らは、ユダヤ人の中の民族的な人々では自力でパレスチナを建設することが出来ないと考え、あらゆる手段を講じてユダヤ人大資本の代表たちおよびその諸団体との合意を得ようと欲している。…シオニストの同士たちよ! シオニズムにとっての厳しい時期にあって、われわれは諸君に訴える。われらが再生の理想を監視せよ。(中略 ― 筆者) 」 数日後、同じ新聞の紙面を飾ったのは、「エト・リヴノト」 (Et Liwnot: ヘブライ語で 「建設の時」 の意。以下 「建設派」 と記す)を標榜する人々の選挙広告であった。それによると、「建設派」 の主張するところは、「監視派」 が指摘するような 「シオニズムの破壊」 ではなく、むしろシオニズムの 「より広範な層への拡大」 なのであった ( 5 )。
こうして、戦間期を通じて解消されることのない 「監視派」 と 「建設派」 の対立が始まった。「監視派」 を組織したのは、グリュンバウムやアポリナルィ・ハルトグラス (Apolinary Hartglas) ら、主としてユダヤ議員団の王国議員たちであり、一方、「建設派」 を設立したのは、レオン・レヴィット (Leon Lewite) とヨシュア・ゴットリープ (Joszua Gottlieb) ら、王国シオニスト組織の中枢に陣取りながらも、議会政治には直接関与していない指導者たちであった。やがて 1924 年に 「第 4 アリアー」 として知られるポーランドからのパレスチナ移住者の増加が起こると、これを非シオニストも含めたユダヤ人中産層によるパレスチナの都市への移住として歓迎する 「建設派」 と、この動きを批判的に捉え、あくまでもシオニストに共鳴し、しかも生産に従事するユダヤ人によるパレスチナ農村部への入植を唱える 「監視派」 との間で評価が分かれ、両者の対立は新しい局面に入っていく。
一方、ユダヤ機関の問題に関し、東ガリツィアのシオニストの間では、ライヒを中心にヴァイツマン支持派が優勢を占めていたが、1920 年後半に入ると、「少数派」 ながらライヒの政策に批判的な人々がグリュンバウムに接近して 「急進派」 を結成する。また、西ガリツィアでもヴァイツマン支持派が多数を占めたが、ヴィルノのシオニストを率いるヤークプ・ヴィゴツキ (Jakób Wygodzki) は議員団において 「監視派」 と行動をともにした。
以上に見てきたように、1920 年代のポーランド・シオニズムは、「国内政治」 においては王国と東ガリツィアの対立を軸とし、また民族的郷土の建設に関しては 「監視派」 に与するシオニストと 「建設派」 を支持するグループとの抗争を軸として展開されていくのである。
( 4 ) 選挙の詳細な結果およびユダヤ議員団の構成については、拙稿 「第二共和政ポーランドにおける議会政治の幕開けと民族的少数派 : 東ガリツィア・ユダヤ人の選択 ( 2 ) 」 『長野県短期大学紀要』 第 64 号 ( 2009 年) を参照。
( 5 ) Nasz Przegląd, nr 103 (z 8 lipca 1923), s. 6; Ibid., nr 109 (z 14 lipca 1923), s. 4.』
ということで、本日はここまでとさせて頂きます。
続きは次回に♥
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