2022-05-19 (Thu)

本日のキーワード : 隷従への道、ハイエク、自由主義、共産主義者、ナチス、ファシスト、社会主義
Breaking the Spell
呪縛を解く ⑦
The Holocaust: Myth and Reality, Overview of the book by Dr. Nicholas Kollerstrom
ホロコースト : ニコラス・コラーストロム博士の著書 「神話と現実」 の概要

The ‘Six Million’
その数、600 万人 (二)
…Nevertheless, in 2006 the managers did release a statement relating to the numbers of those who had died of gassing: there were none, or rather, they had no records of there being any victims of gassing – at all. The ensuing controversy was enough for them to beat a hasty retreat and no further statements have been forthcoming. (We will not be so reticent, but soon discuss the matter thoroughly under the section on ‘science’.)
ところが、2006年、(アロルセン文書館の) 責任者たちは、ガスで死んだ人の数について声明を発表した。ガスで死んだ人は一人もいない、いや、むしろガスで死んだという記録は全くない。しかし、その後に起こった論争で、彼らは急いで撤回し、それ以降の声明は発表していない。(私たちは、遠慮することなく、間もなく 「科学」 のセクションでこの問題を徹底的に論じるつもりである)。
The official figures for total mortality in each of the camps, however, continue to fluctuate – often wildly, depending on which ‘eyewitness’ account or official pronouncement is prominent at the moment – but mostly downwardly. Thus, whereas the figures for Dachau right after the war numbered some 238,000 deaths, the total today stands at 20,600. This lowering by a factor of ten seems to be heading in the direction indicated by the primary source archives. But what then of the ‘six million’ figure? Surely the initial ‘four million’ proffered by the Soviets at Nuremberg would have played into the grand total. But why exactly ‘six’? Why not seven or eight – or five? And here the author begs us take note of a very peculiar fact: To wit, the undeniable prior existence of a longstanding meme involving precisely the ‘six million’ figure. As Kollerstrom relates,
しかし、各収容所での総死亡率の公式数値は変動し続けている (しばしば、その時々の 「目撃者」 の証言や公式発表の内容によって目まぐるしく変わるが、たいていは下降傾向にある) のである。たとえば、終戦直後のダッハウの死者数は 238,000 人であったが、現在の死者数は 20,600 人である。この 10 分の 1 という数字は、一次資料のアーカイブが示す通りの方向に向かっているようだ。>では、「 600 万人」 という数字はどうだろう。確かに、ニュルンベルク会議でソ連が最初に提示した 「 400 万人」 という数字は、総計の中に入っていたはずである。しかし、なぜ 「 6 (百万人) 」 なのだろう。なぜ、7 (百万人)、8 (百万人)、あるいは 5 (百万人) ではないのか? ここで著者は、非常に奇妙な事実に注目するよう促している。つまり、まさに 「 600 万人」 という数字に関わる長年のミームが、否定できない形で以前から存在していたのである。コラーストロムが言うように、
“So, whence came that totemic number? It began in America around 1900 as a fundraising stunt, and then kept pulsing through the twentieth century like some Hellish mantra. Here are some 166 references, 1900 – 1945. They are overwhelmingly American. At the dawn of the 20th century, the ‘suffering’ of six million Jews became an argument in favour of the new Zionist project….It helped fundraising, with the number being cited as the total number of Jews in Europe. During World War I it was always six million Jews who were starving, in need of rescue, etc.”
「それでは、この数字はどこから来たのだろうか? 1900 年頃、アメリカで資金集めのために始まり、20 世紀を通じて、あたかも地獄の呪文のように脈々と受け継がれてきたのだ。1900 年から 1945 年までの 166 の文献を紹介しよう。圧倒的にアメリカのものが多い。20 世紀の初め、600 万人のユダヤ人の 「受難」 は、新しいシオニスト・プロジェクトを支持する論拠となった。この数字はヨーロッパのユダヤ人の総数として引用され、資金集めに役立った。第一次世界大戦中は、常に 600 万人のユダヤ人が飢え、救出を必要としていたのである。」
And thence the author dutifully lists 166 references. It is worth taking a brief gander at a few of them, just to get the feel of the matter:
と、そこから著者はひたすら 166 の参考文献を列挙している。この問題の本質を理解するために、そのうちのいくつかを簡単に見てみる価値はあるだろう。

1906 – New York Times, 25 March 1906: “….the condition and future of Russia’s 6,000,000 Jews were made on March 12 in Berlin to the annual meeting of the Central Jewish Relief League of Germany by Dr. Paul Nathan…He left St. Petersburg with the firm conviction that the Russian Government’s studied policy for the “solution” of the Jewish question is systematic and murderous extermination.”
1906 年 : ニューヨークタイムズ 1906 年 3 月 25 日
「 3 月 12 日、ベルリンで開かれたドイツ中央ユダヤ人救済連盟の年次総会で、ポール・ネイサン博士によって、ロシアの 600 万人のユダヤ人の状態と将来について発表された。彼は、ロシア政府がユダヤ人問題の 「解決」 のために研究している政策は、組織的かつ殺人的な絶滅であるという確固たる確信を抱いて、サンクト・ペテルブルグを後にした。」
1913 – Fort Wayne Journal Gazette (Ind.), 18 October 1913, page 4: “There are six million Jews in Russia and the government is anxious to annihilate them by methods that provoke protests from the civilized world.”
1913 年 : Fort Wayne Journal Gazette (Ind.)、1913 年 10 月 18 日、4ページ
「ロシアには 600 万人のユダヤ人がおり、政府は文明世界の抗議を引き起こすような方法で、彼らを全滅させようと躍起になっている」
1915 – New York Tribune, 14 October 1915: “What the Turks are doing to the Armenians is child’s play compared to what Russia is doing to six million Jews, her own subjects.”
1915 年 : ニューヨーク・トリビューン紙、1915 年 10 月 14 日
「トルコ人がアルメニア人にやっていることは、ロシアが自分の臣民である 600 万人のユダヤ人にやっていることに比べれば、子供の遊びのようなものだ」
1918 – New York Times, 18 October 1918: “Six million Souls Will Need Help to Resume Normal Life When War Is Ended….Committee of American Jews Lays Plans for the Greatest Humanitarian Task in History….6,000,000 Jews Need Help.”
1918 年 : ニューヨーク・タイムズ、1918 年 10 月 18 日
「戦争が終わったとき、600 万人の魂が通常の生活を取り戻すための助けを必要とする。アメリカのユダヤ人委員会は、歴史上最も偉大な人道的任務のための計画を立てている。6,000,000人のユダヤ人が助けを必要としている
1919 – San Antonio Express, 9 April 1919, page 12: “At no other time in the history of the Jewish people has the need been so great as now. Six million of our brothers and sisters are dying of starvation. The entire race is threatened with extinction.”
1919 年 : サンアントニオ・エクスプレス、1919 年 4 月 9 日、12 ページ
ユダヤ人の歴史上、今ほど必要性が高まっている時はないであろう。我々の兄弟姉妹のうち 600 万人が飢えで死んでいる。全人類は絶滅の危機に瀕している。
1921 – New York Times, 20 July 1921, page 2: “BEGS AMERICA SAVE 6,000,000 IN RUSSIA. Russia’s 6,000,000 Jews are facing extermination by massacre.”
1921 年 : ニューヨークタイムズ 1921 年 7 月 20 日 2ページ
「アメリカにロシアの 6,000,000 人を救うよう懇願する。ロシアの 6,000,000 人のユダヤ人は虐殺による絶滅に直面している。」
1926 – Encyclopedia Britannica, 13th Edition, Vol. 1, 1926, page 145: “While there remain in Russia and Romania over six millions of Jews who are being systematically degraded…”
1926 年 : ブリタニカ百科事典、第 13 版、第 1 巻、1926 年、145 ページ
「ロシアとルーマニアに 600 万人以上のユダヤ人が残っているが、彼らは組織的に虐げられている…」
1931 – The Montreal Gazette, 28 December 1931, page 25: “SIX MILLION JEWS FACE STARVATION,…..FEARS CRISIS AT HAND….six million Jews in Eastern Europe face starvation, and even worse, during the coming winter.”
1931 年 : 1931 年 12 月 28 日付のモントリオール・ガゼット紙、25 ページ
「 600 万人のユダヤ人が飢餓に直面している…危機が迫っている…東ヨーロッパの 600 万人のユダヤ人が、来る冬の間に飢餓、そしてさらに悪い状況に直面している。」
And so on and so forth, for 166 entries.
などなど、166 項目にも及ぶ。




☆『Breaking the Spell』 The Unz Review • An Alternative Media Selection
☆投資家サーベイ結果発表 「岸田政権、支持しますか?」
本日の書物 : 『隷従への道』 フリードリヒ・ハイエク 日経BP
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 【 1933 年以前のドイツ】と【 1922 年以前のイタリア】で、【共産主義者とナチスまたはファシストとが他の党派以上に衝突していた】ことは事実である。【彼らは同種の傾向を持つ人々の支持を得ようとつば競り合いを繰り返し、互いに相手を異端者のごとく憎んでいた】。だから彼らの行動は、【両者の共通性】を雄弁に語っている。【両者にとっての真の敵】、すなわち共通項が何もなく説得する望みがいっさい持てない敵は、【古いタイプの自由主義者】である。ナチスにとっての共産主義者、共産主義者にとってのナチス、両者にとっての社会主義者は、勧誘相手として大いに有望だった。誤った宣伝を吹き込まれてはいても、もともと思想的な下地は備わっているからである。だが【共産主義者も、ナチスやファシストも、個人の自由を信奉する人々と自分たちとの間には歩み寄りの余地がまったくないことを、重々承知している】。
いずれかの党派のプロパガンダに惑わされている人々のために、ここでもう一つだけ、権威ある学者の意見を引用させてほしい。ドイツのキリスト教社会主義で指導的役割を果たしたエドゥアルド・ハイマンの 『自由主義の再発見』 (なかなかに意味深長なタイトルだ) からの引用である。
「ヒトラー主義は、真の民主主義であり、かつ真の社会主義だと称している。おそろしいのは、この主張に一片の真実が含まれていることだ。もちろん小指の先ほどの真実ではあるが、それだけで十分に途方もない歪曲をすることができる。ヒトラー主義は、キリスト教の擁護者としても機能すると主張するが、この言語道断の詐称でさえ人々にそれなりの感銘を与えてしまうのだからおぞましい。だが、この闇の中で【一つだけ光り輝く事実がある】。【それは、ヒトラーが真の自由主義者を標榜したことが一度もないという事実】だ。よって【自由主義は、ヒトラーが最も憎んだ主義だ】という点で他の思想とはっきりと一線を画すのである」。

ただしここで、次の点を付け加えておきたい。自由主義に対するこの憎悪はめったに公に表明されなかったが、それは、【ヒトラーが権力の座に就く頃のドイツでは自由主義はどこからどう見ても死に絶えてしまった】からにすぎない、ということである。【自由主義を殺したのは、社会主義だった】。』

“ホロコースト” は、そもそも歴史的事実なのかどうか・・・それこそが今後の課題
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、資本主義を研究する学問である経済学において、偉大なる経済学者の一人であるフリードリヒ・ハイエクが、ナチズム (あるいはファシズム) と社会主義・共産主義の類似性を明らかにしつつ、 それらの集産主義体制が必然的に全体主義へと至ってしまう危険性について警鐘を鳴らした、非常に有名な書物で、本書を通じて、『 「法の支配」 に基づく自由民主主義』 がいかに大切なものであるのかを改めて理解することができ、財務官僚如きにコントロールされ、「法の支配」 を無視した勝手な決定を次々と行っている (例 : ウクライナへの軍事物資支援 = 戦争行為)、トコトン無能な “岸田政権” も、実は、ハイエクが警鐘を鳴らしたものに、まさしく繋がっているという現状が良く分かるようになる、当ブログお薦めの良書になります。無能で危険極まりない岸田一派は、政権のみならず、政界そのものから抹消することが、私たち日本国民の喫緊の課題となりますので、是非広く日本国民の皆様にお読みいただきたいと思います。

それでは本日も、いつものように、直近の「致死率」を確認しておきましょう。
(死亡症例数)÷(感染症例数)=(致死率)
※( )内は前回の数値

☆Coronavirus COVID-19 Global Cases by Johns Hopkins CSSE
アメリカ : 998,997(998,230)÷82,223,174(82,088,931)=0.0121・・・(0.0121) 「1.21%(1.21%)」

イタリア : 164,846(164,731)÷16,915,301(16,872,618)=0.0097・・・(0.0097) 「0.97%(0.97%)」

日本 : 29,939(29,898)÷8,214,311(8,168,462)=0.0036・・・(0.0036) 「0.36%(0.36%)」

さて、これまで、ドイツで生まれた「キリスト教神智学(Christian theosophy)」・「ベーメ神智学(Boehmian theosophy)」を出発点として、その後、人為的に造り出された “幻想” であるところのマルクス主義・共産主義・社会主義という類の妄想を経て、ソ連崩壊とともに死滅したかに思われたものの、現在に至るまで一貫して受け継がれていく “信仰” が存在していて、その根底にある、ユダヤ・キリスト教的な 「贖罪(しょくざい)」 の意識により、さまざまな “アイデンティティ” を次から次へと粗製濫造することによって、「贖罪」の対象物として “罪” を創り出し、自らの罪に対する償(つぐな)い・贖(あがな)いを果たそうと躍起になっている、そんな 「極左おパヨク」 に繋がる一連の系譜について確認して参りました。

ここで御理解頂きたいのは、そんなおバカな 「極左おパヨク」 は、飽くまでも、ある連中が果たそうとしている、ある目的の達成のための道具でしかないということです。
その目的とは、さまざまな “アイデンティティ” を意図的に粗製濫造することで、社会分断を行い、到底達成不可能な目標である “平等 (equality)” を強要(←全人類の均一化・同質化などは不可能であることは自明です!)し、多くの人々に対して自己抑圧的な態度の徹底を促し(←これが、ポリコレw)、人々の “自由” を奪う極めて権威主義的な統制社会の再構築を目指す、というものです。
では、なぜ、それを目指そうとするのでしょうか?
それは、「寡頭制 (oligarchy/オリガルキー)」のもとで、ある連中にとって非常にコントロールしやすい社会が構築できるからです。

その「寡頭制 (oligarchy/オリガルキー)」については、これまたドイツ出身の社会学者・歴史学者であり、マルクス主義者で、エリート理論の信奉者で、ファシズム(全体主義者)でもあったロベルト・ミヒェルス(ロベルト・ミヘルス)が提唱した仮説である 『寡頭制の鉄則』 (iron law of oligarchy)について確認をしてきましたが、そこにもやはり「キリスト教神智学(Christian theosophy)」・「ベーメ神智学(Boehmian theosophy)」の影響を見ることができました。

ロベルト・ミヒェルス(ロベルト・ミヘルス)
また「寡頭制 (oligarchy/オリガルキー)」と同根の言葉である「オリガルヒ(oligarch)」につきましても、ロシアやウクライナの事例を参照して、それがいまから数十年前に、マルクス主義が生み出した “社会主義・共産主義の幻想” が瓦解・崩壊する過程で作り出されたものであることを確認し、そこには少なからぬ 「ユダヤ人 (=ユダヤ教徒)」 が存在していることも判明いたしました。さらには、ウクライナとユダヤ人 (=ユダヤ教徒) と特異な関係を、ウマン (ウーマニ) 巡礼の形成の歴史を通じて確認することができました。

そこで、現在 “ユダヤ人” (民族としては定義され得ない、単なる宗教信者のグループ) という存在に着目し、より一層理解を進めるために、、次の論文を見ているところとなります。

☆『ナチ・ドイツにおける経済の脱ユダヤ化 ― 1938年十一月ポグロムの社会経済的背景 ―』 山本達夫
それでは早速、続きを見て参りましょう。
『 終章まとめと今後の課題
最後に本稿の概要を整理し,今後の課題を述べる。
経済の脱ユダヤ化とは,ナチ・ドイツで行われた経済活動からのユダヤ経営の排除を意味するナチ用語である。当初,無秩序に展開されていた排除は 1937 年末以降,一定の政策として遂行されるようになった。この政策の遂行過程でユダヤ経営は清算 (閉鎖) または所有権がドイツ人に譲渡された (アーリア化)。経済の脱ユダヤ化政策によってユダヤ経営はドイツ社会経済から姿を消した。
経済の脱ユダヤ化は資本主義秩序をゆるがす危険性をはらんでいた。そのため反ユダヤ・イデオロギーと経済合理性のあいだを揺れ動いた。経済の脱ユダヤ化の分析は第三帝国の社会経済構造の解明につながるはずである。だが,わが国のドイツ現代史研究においては未開拓の分野となっている。圧倒的なホロコーストの現実の前に,絶滅政策以外のユダヤ人政策が絶滅政策に収れんするものとして考察されるか,付随的・周辺的に扱われてきたことがその原因として考えられる。
経済の脱ユダヤ化には多くの組織が関与し,その影響はドイツ社会経済の広範におよんだ。「法治国家」 を建前に衆人環視のなかで財産の強奪を行うため,擬似合法的な法令が必要とされた。法案を作成したのが,職業官吏制度再建法によってナチ化された官吏であった。1935 年のニュルンベルク法も官吏のナチ化がもたらしたものである。経済の脱ユダヤ化に関連する重要な法令は,ニュルンベルク法にもとづく行政命令として発布された。
ナチ・ドイツのユダヤ人政策を考察するには政策が個々の局面で有した社会経済的機能を分析する必要がある。反ユダヤ主義が社会現象として出現するのは歴史的過程だからである。経済の脱ユダヤ化は 1936 年秋に始動する四カ年計画と深く関連していた。四カ年計画とは 「民族共同体」 の強化と戦争経済体制の確立を目的としたナチの統制経済である。
ナチの統制経済は営業経済組織をとおして行われた。営業経済組織は当初ユダヤ人を排除せず 「経済におけるユダヤ人の平等」 の原則を堅持していた。これは無論ユダヤ経営に無制限の活動の自由を認めたものではない。ライヒ経済省はユダヤ経営を営業経済組織内にとどめて管理しようとしたのである。
輸入監視局による原料わりあて制度は,産業部門間に跛行状態を生じさせた。これは四カ年計画がドイツ社会経済におよぼした最大の影響である。一方での労働力不足と他方での余剰労働は,強制労働配置を国策化していった。不急不要の産業部門としてとくに繊維・衣料産業部門が標的とされた。この産業部門は伝統的にユダヤ人とユダヤ経営の力が圧倒的な部門でもあった。
経営の存続が脅かされるなか,ドイツ人経営者たちは営業経済組織への抵抗を始めた。国境地帯リンネル織物業連合有限会社は関連中小経営の自己防衛を試みた。同じ衣料部門の連盟である Adefa は反ユダヤを掲げて業界の再編を試みた。両組織の特徴は,営業経済組織の影響を排した独自の集団を結成しようとしたこと,およびナチ党の理念を盾として行動したことにある。リンネル織物業連合は中間層の保護を,Adefa は第三帝国の国是である反ユダヤ主義を掲げた。ナチ指導部はこれらの組織を正面から批判できなかった。
同じころ,ドイツ企業によるユダヤ企業の合併 (アーリア化) が加速していた。アーリア化の目的のひとつは実体としての経営の存続,職場の確保であった。アーリア化の蔓延によってユダヤ人問題が隠蔽・温存される (偽装アーリア化) おそれが生じた。ナチ指導部にとって,攻撃対象としてのユダヤ経営の存在は,経営の閉鎖と強制労働投入による 「最高効率の労働体系」 の確立に不可欠であった。ユダヤ経営の存続と閉鎖をめぐってユダヤ経営問題が生じ,これがナチ指導部にとってのユダヤ人問題となった。
1937 年末以降,ナチ指導部はユダヤ人問題の解決に乗り出す。「経済におけるユダヤ人の平等」 の原則を否定し,ユダヤ経営あての原料わりあて量を削減した。目的は,労働力と原料の産業部門間における移動の促進である。「民族共同体の敵」 としてのユダヤ人への攻撃は,四カ年計画が惹起した社会経済的矛盾への政策的対応であった。
1938 年 6 月,供給過剰の経営の閉鎖と労働忌避者 (余剰労働力) の動員を目的とする 「六月行動」 が起こされた。これはユダヤ経営問題のナチ的解決であった。経営の計画的・暴力的閉鎖は,その後十一月ポグロムによって補完された。「第二次六月行動」 としてのポグロムは,そのテロ的側面だけではなく社会経済政策的側面にも注目しなければならない。十一月ポグロムの原因として現在なお流布している 「グリュンスパンの引き金説」 は誤りであり,当時のナチのプロパガンダを追認するものにすぎない。むしろ引き金を引いただけであれだけの殺人と狼藉が行われ得た当時の社会経済的背景,それを生み出したナチ社会経済体制の責任が問われなければならないのである。
ドイツ・ユダヤ人が 「ユダヤ系のドイツ国民」 であったことをふまえて,ホロコーストが 「多数派のドイツ人による少数派のドイツ人の殺害」 であった (長田) といえるのであれば,経済の脱ユダヤ化は 「少数派のドイツ人の迫害を通じたドイツ社会経済の統制と支配」 であったといえる。
つぎに今後の課題について述べる。
第 1 は,本論で詳細に論じることができなかった RKW 国家経済性管理機構が経済の脱ユダヤ化に果たした役割を具体的に解明することである。RKW がライヒ経済省あるいは営業経済組織とどのような関係にあったのかは本稿であきらかにし得なかったからである。
我が国において RKW に注目してきたのはドイツ経営史である。しかし,合理化運動と国家の関わりを論じた山崎敏夫 ( 『ナチス期ドイツ合理化運動の展開』 ) にみられるように,公共投資の統制を通した軍需部門の技術的合理化の進展,経営共同体による労使協調路線の推進,標準化を通した技術政策による企業合理化の推進といった RKW の 「表の顔」 が叙述されているに過ぎず,ユダヤ人政策への関与という 「裏の顔」 には言及されていない。他方ドイツ現代史研究の分野では,柳澤治などがナチス経済機構の調査をしているが ( 「ナチス期ドイツにおける社会的総資本の組織化」 「ナチス・ドイツの蹴る商工会議所の改造」 ),RKW についての言及はなく,ナチス経済機構の全容解明にはほど遠い状況である。
RKW とライヒ経済省との関係を明らかにすることは,ナチズムにおけるいわゆる技術エリートの役割の解明にもつながると考える。小野清美がつとにこの問題に言及しているが ( 『テクノクラートの世界とナチズム』 ),RKW を正面から論じてはいない。ドイツにおける論争では,ディーナーの議論 *861 ) やこれに対するアリの同誌上における再反論 *862 ),フライの論考 *863 ) が重要であるが,RKW の役割について決着を見ているとは言いがたい。
第 2 は 「衣料ユダヤ人」 像の形成過程と実態の解明である。本論でも述べたように,近代ドイツ経済社会においてユダヤ人が衣料産業の分野で果たした役割は大きかった。しかし 「支配的な影響力」 という文言が経済政策に利用されたとするならば,その具体的な根拠を示す必要がある。ヴェストファールは,繊維衣料産業の脱ユダヤ化において 「衣料ユダヤ人」 が喧伝されていたというテーゼを打ち出しているが,詳細には論じていない。 *864 ) この興味深いテーゼを詳細に検証したい。
「衣料ユダヤ人」 像については,反ユダヤ宣伝とユダヤ人政策の関係の解明も重要とな以下の 2 点が必要となると考えている。① ドイツ社会にいて 「衣料ユダヤ人 Konfektionsjuden 」 像がいつ,どのように形成され,これがプロパガンダとして政策の遂行にどう利用されたかを検証すること。② 「衣料ユダヤ人」 像に対するライヒ経済省および RKW の関与を明らかにすること。
繊維衣料産業が経済の脱ユダヤ化・経済再編過程の初期段階に位置していことを考えあわせると 「衣料ユダヤ人」 像の形成・展開過程を跡づける学術的な意味は大きい。ある商店を 「ユダヤ経営」 または 「アーリア経営」 とみなす基準の適用が,政策としての経済の脱ユダヤ化の前提条件であった。国家指導部が一般住民に対して 「衣料ユダヤ人」 のプロパガンダをどのように利用し,住民の側にどのような反応があったのかを明らかにできれば,第三帝国における経済政策・ユダヤ人政策を,住民操作の観点から具体的に検証できるであろう。当時の新聞・雑誌などの史料,とくに Pressedienst der NSDAP の史料によって解明できるのではないかと考えている。
*861 ) Diener, Dan, Rationalisierung und Methode. Zu einem neuen Erklärungsversuch der "Endlösung," in: VjZG 40, 1992.
*862 ) VjZG 41, 1993.
*863 ) Frei, Norbert Wie modern war Nationalsozialismus? G G 19, 1993, Ludwig Karl-Heinz, Technik und Ingenieure im Dritten Reich, 1974
*864 ) Westphal, Uwe, Berliner Konfektion und Mode 1836-1939. Die Zerstörung einer Tradition. 2. erweiterte Auflage (Berlin, 1992), p. 100. 』
ということで、本日はここまでとさせて頂きます。
続きは次回に♥
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