2022-04-18 (Mon)

本日のキーワード : 国際政治、列強政治、国際連盟
Uncle Sam's Nazi Warriors
サムおじさんのナチス戦士 ③


“A stronger race will drive out the weaker ones, for the vital urge in its ultimate form will break down the absurd barriers of the so-called humanity of individuals to make way for the humanity of nature which destroys the weak to give their place to the strong.”
「より強い民族はより弱い民族を駆逐する。生命衝動はその究極の形として、いわゆる個人の人間性という不条理な障壁を打ち砕き、弱いものを破壊して強いものにその座を与える自然の人間性への道を開くからである。
“Blood sin and desecration of the race are the original sin of this world and the end of a humanity that surrenders to it.” (“Adolf Hitler, Quotes on Race”, quotetab)
血の罪と民族の冒涜はこの世の原罪であり、それに屈服した人類の末路である。」 アドルフ・ヒトラー
The above quotes provide a window into the ideology that was used to justify a world war against “inferior people” who were seen as expendable in the eyes of their Aryan overlords. Why– you may ask– is the US supporting the adherents of this same fiendish dogma in Ukraine today?
上記の引用は、アーリア人の支配者の目には消耗品としか映らない 「劣等人種」 に対する世界戦争を正当化するために使われたイデオロギーを知るための窓を提供してくれる。なぜアメリカは今日、ウクライナでこれと同じ邪悪な教義の信奉者を支援しているのだろうかと疑問に思うかもしれない。
We can’t answer that, but here’s more background from an article by Monseigneur Carlo Maria Vigano:
我々はそれに答えることはできないが、モンセニュール・カルロ・マリア・ヴィガーノの記事から、より多くの背景を紹介しよう。

Maidan coup conspirators Oleh Tyahnybok (left), U.S. Asst. Sec. of State Victoria Nuland (center), Yarsenyi Yatsenyuk, and (right) Vitali Klitschko (rear).
マイダン・クーデターの共謀者であるオレ・タヤニボック(左)、ヴィクトリア・ヌーランド米国務副長官(中央)、ヤルセニ・ヤツェニュク、(右)ヴィタリ・クリチコ(後方)。
“Neo-Nazi movements engaged in military and paramilitary actions operate freely in Ukraine, often with the official support of public institutions. These include the following: Stepan Bandera’s Organization of Ukrainian Nationalists (OUN), a movement with a Nazi, anti-Semitic and racist matrix already active in Chechnya and which is part of the Right Sector, an association of far-right movements formed at the time of the Euromaidan coup in 2013/2014; the Ukrainian Insurgent Army (UPA); the UNA/UNSO, paramilitary wing of the far-right political party Ukraine National Assembly; the Korchinsky Brotherhood, which offered protection in Kiev to ISIS members; Misanthropic Vision (MD), a neo-Nazi network spread across 19 countries that publicly incites terrorism, extremism and hatred against Christians, Muslims, Jews, Communists, homosexuals, Americans and people of color.
軍事行動や準軍事行動に従事するネオナチ運動は、しばしば公的機関の公式支援を受けて、ウクライナで自由に活動している。これらには次のようなものがある。ステパン・バンデラのウクライナ民族主義者組織 (OUN) は、チェチェンですでに活動していたナチス、反ユダヤ、人種差別の母体を持つ運動で、2013 / 2014 年のユーロマイダンのクーデターの際に結成された極右運動の連合体、右派セクターの一部であり、ウクライナ反乱軍 (UPA) であった。極右政党ウクライナ国民会議の準軍事組織であるUNA / UNSO、ISIS メンバーにキエフでの保護を提供したコルチンスキー同胞団、19 カ国に広がるネオナチネットワークでキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、共産主義者、同性愛者、アメリカ人や有色人種に対するテロ、過激主義、憎悪を公に扇動するミサントロピック・ビジョン (MD)、などなどです。
It should be remembered that the government has given explicit support to these extremist organizations both by sending the presidential guard to the funerals of their representatives, as well as by supporting the Azov Battalion, a paramilitary organization that is officially part of the Ukrainian Army under the new name of Azov Special Operations Regiment and organized into the National Guard. ..
政府はこれらの過激派組織の代表者の葬儀に大統領警護隊を派遣したり、アゾフ特殊作戦連隊という新しい名称でウクライナ軍の一部となり国家警備隊に組織されている準軍事組織アゾフ大隊を支援したりして、明確に支援してきたことも忘れてはならない。
In March 2015, Ukrainian Interior Minister Arsen Avakov announced that the Azov Battalion would be one of the first units to be trained by US Army troops, as part of their Operation Fearless Guard training mission. … “We have been training these guys for eight years now. They are really good fighters. That’s where the Agency’s program could have a serious impact.” (“Declaration of Msgr. Carlo Maria Viganò on the Russia-Ukraine Crisis”, marcotosatti.com)
2015 年 3 月、ウクライナのアルセン・アヴァコフ内務大臣は、アゾフ大隊がオペレーション・フィアレス・ガードの訓練任務の一環として、米軍部隊による訓練を受ける最初の部隊の 1 つになることを発表した。…「我々は彼らをもう 8 年も訓練している。彼らは本当に良い戦士たちです。そこに、この機関のプログラムが重大な影響を与える可能性があるのです。」


Tyahnybok: "Moscow-Jewish mafia" is running Ukraine.
タヤニボック : 「モスクワ・ユダヤ・マフィア」 がウクライナを牛耳っている。
Vigano is right, the US has been providing combat training to Ukrainian Nazis and other far-right groups in secret camps since 2015. These ultra nationalist militias will now pass along these same skills to tens of thousands of other like-minded militants increasing the global spread of fascism by many orders of magnitude. Here’s more from an article at Jacobin Magazine:
ヴィガーノの言う通り、アメリカは 2015 年から秘密キャンプでウクライナのナチスや他の極右グループに戦闘訓練を行ってきた。これらの超国家主義的な民兵は今、何万人もの志を同じくする過激派に同じ技術を伝え、ファシズムの世界的な広がりを何桁も増大させることになるのだ。以下は、Jacobin Magazine の記事からの引用です。
“Not just the Ukrainian far right, but neo-fascist forces from all over the world, including the US and Europe, will now receive combat experience with the most advanced weapons in the world. They will also be able to continue developing their international networks, to which the Ukrainian far right, and especially the Azov Battalion, have long been central…
「ウクライナの極右勢力だけでなく、欧米を含む世界中のネオ・ファシスト勢力が、世界最先端の兵器による戦闘経験を積むことになる。また、ウクライナ極右、特にアゾフ大隊が長い間中心となってきた国際的なネットワークの整備も継続できるだろう…
… since 2015, the CIA has been secretly training forces in Ukraine to serve as “insurgent leaders,” in the words of one former intelligence official, in case Russia ends up invading the country. Current officials are claiming the training is purely for intelligence collection, but the former officials Yahoo! spoke to said the program involved training in firearms, “cover and move,” and camouflage, among other things.
… 2015 年以来、CIA は、ロシアがウクライナに侵攻することになった場合に備えて、ある元諜報関係者の言葉を借りれば、「反乱軍のリーダー」 として活躍する部隊をウクライナで密かに訓練してきた。現在の関係者は、この訓練は純粋に情報収集のためだと主張しているが、ヤフーが取材した元関係者は、このプログラムには銃器、「カバー&ムーブチームによる戦闘行為の基礎戦術)」、カモフラージュなどの訓練が含まれていると述べた。
Given the facts, there’s a good chance that the CIA is training actual, literal Nazis as part of this effort. The year the program started, 2015, also happened to be the same year that Congress passed a spending bill that featured hundreds of millions of dollars’ worth of economic and military support for Ukraine… (“The CIA May Be Breeding Nazi Terror in Ukraine”, Branko Marcetic, Jacobin Magazine)
事実を踏まえると、CIA がこの取り組みの一環として、実際の文字通りのナチを訓練している可能性は十分にある。また、このプログラムが始まった 2015 年は、たまたま議会がウクライナへの数億ドル相当の経済・軍事支援を内容とする歳出法案を可決した年と同じだった…」



☆“Uncle Sam's Nazi Warriors” The Unz Review・ An Alternative Media Selection
☆投資家サーベイ結果発表 「岸田政権、支持しますか?」
本日の書物 : 『戦争と国際法を知らない日本人へ』 小室 直樹 徳間書店
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 それはそうと、話は、【ウィルソンの致命的失敗】。
【へんな理想主義を振りかざしたばっかりに、国際政治の本質を見失ってしまった】のであった。
【国際政治の本質】は、ウィルソンがなんとかして否定しようとしたにもかかわらず、ヴェルサイユ会議の後といえども、【依然として、列強政治であった】。
それなのにウィルソンが、国際連盟なんていうゲテモノを持ち出すものだから、【人びとには、その本質が見えにくくなってしまった】。
【アメリカ】は、【無責任としか言いようのない態度をとった】。いや、アメリカが古色蒼然 (こしょくそうぜん) たる孤立主義の柵 (しがらみ) にへばりついていることに、気付かなかった【ウィルソンの責任】というべきか。そのために、ウィルソン必死の努力にもかかわらず、【国際連盟は無力化】し、【骨がらみの列強政治にまいもどる】ことになる。
【アメリカ】は、なんと、【ヴェルサイユ条約を批准しなかった】のであった。また、自国の大統領【ウィルソンの提唱にかかる国際連盟にも加入しなかった】。こんないきさつでは、ヴェルサイユ条約と国際連盟のゆくすえ、呪われたるかな。
敗戦国ドイツと革命によって成立したソ連とは、しばらく無力であった。はじめ、国際連盟に加入しなかった。
【ヴェルサイユ条約と国際連盟とは、わずかに英国とフランスのニ列強だけによって担保された】のであった。
ドイツとソ連 (ロシア) とが、しばらく退陣したので、【アメリカ、イギリス、日本、フランス、イタリアは五大国】と呼ばれた。とはいうものの、【日本には、山東問題という痼 (しこり) が残った】。【イタリアは弱すぎた】。【アメリカは、ヴェルサイユ体制の外に残った】。
【国際連盟の無力さ】を、【まざまざと見せつけることになるのが満洲事変】。
昭和六年 ( 1931 年) 九月十八日、【日本軍は突如として行動を開始】し、まもなく、【満洲を占領した】。さあ、国際連盟が騒いだの騒がないのって。
1929 年までに 54 ヵ国が加入した 1928 年の【ケロッグ・ブリアン協定 (不戦条約) 】によって、「国際紛争解決の手段としての戦争は放棄」 されていた ― なお、【 「日本国憲法」 は、あきらかに、このケロッグ・ブリアン協定の焼き直しである】 ―。
勝手に出兵することは、【不戦条約に対する真向からの挑戦である】。
また、【日本は九カ国条約違反であるとも非難された】。1922 年に結ばれた九カ国条約とは、日、米、英、仏、伊、蘭、中、ベルギー、ポルトガルとの間で結ばれた条約であって、中国の独立と領土を保障している。満洲を中国の領土と看做せば、日本の満洲出兵は、九カ国条約違反となる。【国際連盟は、日本の満洲における行動を非難し、軍事行動の停止を要求してきた】。
【が、日本は聞かない】。【どんどん勝手に軍事行動をおし進め、ついに、熱河を含めて満洲全土を占領してしまった】。
しかし、【国際連盟を牛耳っている英仏の肚 (はら) は、日本のごとき軍事大国がひとたび決意した以上、その軍事行動を押しとどめる力なんか、どこの国にもないことをよく知っていた】。それは、【永年の列強政治の智慧】である。しかし、【多くの連盟加入国は、列強政治の体験がないゆえに、この智慧がなかった】。口をそろえて、日本を非難した。【英仏は、肚の中では、弱小国の日本非難を苦々しく思った】。【なんの実力もないくせに、日本を非難したって無駄だ】。【そんな非難をくりかえせば、事態をますます紛糾させるだけである…】。連盟の実力者英仏は、こう思って裏では、日本と弱小国とのあいだをとりなそうとした。』

社会的コンセンサスの形成に果たすマスメディアの役割
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、ロシアによるウクライナ侵攻という歴史的な出来事を理解する上で必要不可欠な要素であるにもかかわらず、特に戦後の日本人に欠けている、「戦争・国際法・国際政治・国際経済」 の基礎に歴として存在しているのが 「キリスト教」 という宗教である、という歴史認識を、著者独特の表現で事の本質を見事に射貫く解説がなされている書物になります。「宗教」 あるいは 「哲学」、はたまた 「法律」 というものを、いわゆる “文系アタマ” の人々は、主観的な感覚・感情によって “自分勝手な” 解釈をしがち (例 : ☆入試国語選択問題の「正解」について――早稲田大学教育学部の説明責任) なのですが、「宗教」 にも 「哲学」 にも 「法律」 にも、「数学」 的 (= 論理的) な要素が多分に含まれていて (というか、それそのものですがw)、“自分勝手な” 解釈は何ら意味をなさないものである、ということが本書を通じて広く日本国民全体で共有できるように、という願いを込めて当ブログはお薦めさせて頂きます。

それでは本日も、いつものように、直近の「致死率」を確認しておきましょう。
(死亡症例数)÷(感染症例数)=(致死率)
※( )内は前回の数値

☆Coronavirus COVID-19 Global Cases by Johns Hopkins CSSE
アメリカ : 986,041(985,580)÷80,459,844(80,410,247)=0.0122・・・(0.0122) 「1.22%(1.22%)」

イタリア : 161,032(160,748)÷15,404,809(15,292,048)=0.0104・・・(0.0105) 「1.04%(1.05%)」

日本 : 28,769(28,722)÷7,122,173(7,072,493)=0.0040・・・(0.0040) 「0.40%(0.40%)」

さて、これまで、ドイツで生まれた「キリスト教神智学(Christian theosophy)」・「ベーメ神智学(Boehmian theosophy)」を出発点として、その後、人為的に造り出された “幻想” であるところのマルクス主義・共産主義・社会主義という類の妄想を経て、ソ連崩壊とともに死滅したかに思われたものの、現在に至るまで一貫して受け継がれていく “信仰” が存在していて、その根底にある、ユダヤ・キリスト教的な 「贖罪(しょくざい)」 の意識により、さまざまな “アイデンティティ” を次から次へと粗製濫造することによって、「贖罪」の対象物として “罪” を創り出し、自らの罪に対する償(つぐな)い・贖(あがな)いを果たそうと躍起になっている、そんな 「極左おパヨク」 に繋がる一連の系譜について確認して参りました。
ここで御理解頂きたいのは、そんなおバカな 「極左おパヨク」 は、飽くまでも、ある連中が果たそうとしている、ある目的の達成のための道具でしかないということです。
その目的とは、さまざまな “アイデンティティ” を意図的に粗製濫造することで、社会分断を行い、到底達成不可能な目標である “平等 (equality)” を強要(←全人類の均一化・同質化などは不可能であることは自明です!)し、多くの人々に対して自己抑圧的な態度の徹底を促し(←これが、ポリコレw)、人々の “自由” を奪う極めて権威主義的な統制社会の再構築を目指す、というものです。
では、なぜ、それを目指そうとするのでしょうか?
それは、「寡頭制 (oligarchy/オリガルキー)」のもとで、ある連中にとって非常にコントロールしやすい社会が構築できるからです。

その「寡頭制 (oligarchy/オリガルキー)」については、これまたドイツ出身の社会学者・歴史学者であり、マルクス主義者で、エリート理論の信奉者で、ファシズム(全体主義者)でもあったロベルト・ミヒェルス(ロベルト・ミヘルス)が提唱した仮説である 『寡頭制の鉄則』 (iron law of oligarchy)について確認をしてきましたが、そこにもやはり「キリスト教神智学(Christian theosophy)」・「ベーメ神智学(Boehmian theosophy)」の影響を見ることができました。

ロベルト・ミヒェルス(ロベルト・ミヘルス)
また「寡頭制 (oligarchy/オリガルキー)」と同根の言葉である「オリガルヒ(oligarch)」につきましても、ロシアやウクライナの事例を参照して、それがいまから数十年前に、マルクス主義が生み出した “社会主義・共産主義の幻想” が瓦解・崩壊する過程で作り出されたものであることを確認し、そこには少なからぬ 「ユダヤ人 (=ユダヤ教徒)」 が存在していることも判明いたしました。さらには、ウクライナとユダヤ人 (=ユダヤ教徒) と特異な関係を、ウマン (ウーマニ) 巡礼の形成の歴史を通じて確認することができました。
そこで、現在 “ユダヤ人” (民族としては定義され得ない、単なる宗教信者のグループ) という存在に着目し、より一層理解を進めるために、、次の論文を見ているところとなります。

☆『ナチ・ドイツにおける経済の脱ユダヤ化 ― 1938年十一月ポグロムの社会経済的背景 ―』 山本達夫
それでは早速、続きを見て参りましょう。
『 第 7 章 経済の脱ユダヤ化とアーリア化
5. 経済の脱ユダヤ化をめぐるプロパガンダ
…本節では,社会的コンセンサスの形成に果たすマスメディアの役割に注目し,当時この政策についてどのようなことが,いかなる論拠で主張されていたのかを,当時の新聞・雑誌などに表れた議論を中心に検証したい。史料としてはドイツ連邦文書館のDAF (ドイツ労働戦線) 関連文書のうち,DAF の労働科学研究所が収集していた 「アーリア化」 に関する当時の新聞,雑誌の記事・論評の切り抜き (行政当局の回覧通達なども含む,1937 年末から 38 年末) *661 ) を利用する。
DAF が収集していた当時の新聞や雑誌の記事・論評をみると,1938 年の時点で経済の脱ユダヤ化に単なる 「異分子の排除」 以上の意義が与えられていたことがわかる。そこで強調されていたのは以下の 3 点である。
1 ) ドイツ人後継者の育成・養成
2 ) 産業・経済構造の変革
3 ) 供給過剰の除去
このうち 2 ),3 ) がライヒ経済省主導の主張である。これに対して 1 ) は,ナチ党綱領にみられる中間層保護・育成政策に連なるもので,経済の脱ユダヤ化をユダヤ営業経営のアーリア化というかたちで行うにあたって展開されたものである。ナチ党の政権掌握前から見られたこの議論は,1938 年の時点でも前面に押し出されていた。
当時の新聞記事にみられる論調は以下のようなものである。経済活動からのユダヤ人の排除は 「何よりもまず民族的,人種的な問題である」 が 「その影響を必然的に経済に及ぼさざるをえず」, *662 ) 経済活動からのユダヤ人の排除は 「政治的な要請である」。 *663 ) ただしドイツ人後継者の養成という主張は非アーリア経営を引き継ぐことで独立の基礎を作り出し,すでに独立している場合にはいっそう経済的に上昇しよう *664 ) といった現実的・実際的な動機と表裏一体をなしていた。ここにおいては党綱領にある 「健全な中間層の育成」 という文言が,もっぱらユダヤ人の犠牲において達成されるべきことが前提とされていたのである。
当時の議論においては 「後継者の養成」,「独立の経営基盤の提供」 といったことが経済の脱ユダヤ化の当然の帰結であり,目標とされていた。「肯定的なアーリア化,すなわちユダヤ営業経営のアーリア人への所有権の移行によって建設的な企業政策を遂行することができる。理想的なのは積極性のある専門家に独立の可能性が与えられる場合である」 という調子である。 *665 )
党当局がアーリア化に積極的に関与し始めるきっかけとなったのは,アーリア化されたユダヤ営業経営を引き継ぐべき後継者の選定・割り振り作業であったようである。そのさい一定の条件を満たしたドイツ人購入者が選定された。購入者には一般の銀行の融資のみならず, *666 ) 場合によっては国庫金を活用することまで提案されていた。 *667 ) 先にみた Adefa による同業者間で銀行の融資を連帯で保証し,資力のない購入希望者にユダヤ営業経営を引き継がせるという活動も,こうした議論の延長線上にあったのである。
しかし党が 「ナチズムの視点で経営を継続する保証」 を与えるという場合,「信頼の置ける」 購入希望者を見つけるだけでは不十分であった。いわゆる健全なドイツ国民経済の建設がその前提とされていた。経済の脱ユダヤ化の社会経済的機能が意識的に論じられるのは,この 「健全な国民経済」 の建設が念頭におかれて議論が展開される場合であった。
こうした議論は,四カ年計画によって 「生産」 「生産的なもの」 により高い価値がおかれ,商業が軽視されるようになったことと関係がある。ライヒ経済省次官ブリンクマン Brinkmann が 1938 年 9 月にのべているところでは,商業は第三帝国にあっては 「心理的な負担抵当」 となっており,「ナチズムの経済が基本的に生産的なものを志向し 〔…〕 生産者のうちに経済の決定的な担い手をみる」 からだとされた。 *668 )
商業が供給過剰であるとの認識は,すでに 1937 年 10 月発行の官報誌 『四カ年計画 Der Vierjahresplan』 にもみられる。「商業における供給過剰の問題」 と題する記事にはこうあった。商業の供給過剰問題は 「ひとり商人の職業生活のみならず,国家の全経済的・社会的構造に関わる」 ものであるので,ドイツの商業政策が取り組むべき問題は 「商業活動はいかなる形態においてもっとも効率よく機能し,それゆえにこそ全体の利益のなかで維持されなければならないか」 ということになる。「国家の課題は,全体の需要のために円滑な商品販売の前提を構築すること,および消費者の利益のために国民経済の分配過程をできるだけ安価なものにすることであり,そのためには民族共同体の利益にかなった供給過剰の除去が行われなければならない」。 *669 )
『四カ年計画』 の論説はまた,経済循環と商業における供給過剰の規模とのあいだには相関関係があり,不況時に 「商人」 の数が最も多くなるので,供給過剰の除去を最も効率的に行うためには好況の頂点の時期に措置を講じる必要があると論じていた。 「 〔供給過剰を除去する〕 必要性と合目的性からして,現在は商業の供給過剰に対する措置を検討するまたとない時期である」。 *670 )
「供給過剰」 の問題は商業にとどまらなかった。ライヒ経済大臣は1938 年 10 月 8 日付の回覧通達 〔史料編 31 ) 〕 *671 ) で皮革生産および皮革加工産業,革製品を扱う卸売・小売業の大部分は供給過剰であり,コスト高と業績悪化をもたらしているとし,「会社の清算を強制し,当該部門の浄化」 を要求している。そのさい従業員の就労先や経営の維持に賛成する地域の利害は却下されねばならないとした。
つまり経済の脱ユダヤ化は供給過剰を除去する手段として位置づけられていたのである。アーリア化が 「ナチズムに対する貢献」 *672 ) であり,「非アーリア企業を購入することで国家や党に対して何らかの特別な保護や優遇措置を要求できる」 *673 ) という風潮に対して 「盲目的なアーリア化は 〔…〕 望ましくない供給過剰を人為的に,ドイツの金を使って維持することと同じである」 *674 ) という主張が対峙された。『フェルキッシャー・ベオーバハター』 紙は 「まちがった見解」 と題する論説において 「アーリア化ではなく清算だ!」 と端的に主張していた。 *675 )
*661 ) BA., 62 DAF 3, 8779 (以下 A と略記),および62 DAF 8780 (以下 B と略記)。これらの史料は,ユダヤ経営の脱ユダヤ化,アーリア化に関する約 160 の記事・論説,回覧通達を含んでいる。BA.の史料解説によると,DAF の資料事務局に設置されていたAWI は 1933 年以降,国内外の新聞・雑誌の記事の切り抜きを収集し,1938 年時点で内外の 2000 におよぶ新聞や雑誌が閲覧されていたという。AWI の前身はドイツ国民貿易助成連盟 (Deutschnationaler Handlungs- gehilfenverband) の中央文書館で,1919 年にハンブルクに本部を設置し,ベルリンには支部を置いていた。(Schreyer, Einleitende Bemerkung zu 62 DAF 3, Deutsche Arbeitsfront, Arbeitswissenschaftliches Institut (AWI), Zeitungausschnittssammlung, Teil "Inland".
*662 ) A-48, "Jüdisches Geschäft", in: Die Deutsche Volkswirtschaft vom 3. 6. 1938.
*663 ) B-58, "Jude, laß die Maske fallen. Kennzeichnung der jüdischen Betriebe", in: Hamburger Tageblatt vom 8. 11. 1938.
*664 ) B-63, "Zur Übernahme nichtarischer Handwerksbetriebe", in: Deutsches Handwerk vom 28. 10. 1938.
*665 ) A-33, "Arisierung ist auch Strukturwandel", in: Deutsche Allgemeine Zeitung vom 18. 8. 1938.
*666 ) B-42, "Personalkredite für den Arisierungsprozeß! Das deutsche Bankgewerbe vor einer großen Aufgabe", in: Der Angriff vom 20. 11. 1938.
*667 ) B-50, "Die Ausschaltung der Juden aus der Wirtschaft", in: Frankfurter Zeitung vom 17. 11. 1938.
*668 ) A-17, "Keine Arisierungsgewinner", in: Deutsche Allgemeine Zeitung vom 15. 9. 1938.
*669 ) Der Vierjahresplan. Zeitschrift für nationalsozialistische Wirtschaftspolitik. Amtliche Mitteilungen des Beauftragten für den Vierjahresplan Ministerpräsident Generaloberst Hermann Göring, 1. Jg. Nr. 10, Okt. 1937, p. 581.
*670 ) Ibid., p. 582.
*671 ) Der Reichswirtschaftsminister. I Techn. 24268/38. Betrifft: Genehmigung des Erwerbs jüdischer Betriebe der Lederwirtschaft (§ 9 der Anordnung des Beauftragten für den Vierjahresplan vom 26. April 1938 -RGBl., I S. 415). Berlin, den 8. Okt. 1938. in: GWB 624
*672 ) A-30, "Arisierungen", in: Der Mitteldeutsche vom. 28. 8. 1938.
*673 ) A-84, "Arisierung ― ja oder nein?" in: Die deutsche Volkswirtschaft vom Januar 1938.
*674 ) A-71, "Heute 'arisiert'― morgen liquidiert", in: Die Bekleidungsarbeit vom 20. 4. 1938.
*675 ) A-63, "Irrtümliche Auffassungen", in: Völkischer Beobachter vom 14. 5. 1938. 』
ということで、本日はここまでとさせて頂きます。
続きは次回に♥
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