2020-01-16 (Thu)

本日のキーワード : ポリス、都市国家
ポリス(希: πόλις, 複数形 πόλεις)は、都市、都市国家、市民権または市民による政体を指すギリシア語である。古代アテナイなど古代ギリシアに関して使用される場合は、通常都市国家と訳される。
本日の書物 : 『イスラム教の論理』 飯山 陽 新潮社
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 これまで「あたりまえ」だと思っていたことが、いつの間にか「あたりまえ」でなくなる。人間の歴史は、その繰り返しです。
そして世界は今、おそらく、これまで何度も経験してきたその転換期を新たに迎えています。…
20世紀後半から推進されてきたグローバル化に対し、先進国では「ノー」を突きつける動きが出始めています。グローバル化はあらゆる国のすべての人々に対して利益があるというテーゼは幻想であると、実際に利益を得ていない人々が主張し始めたからです。
そしてこの反グローバル化とは全く異なる次元で、【既存の世界秩序を否定する勢力】も登場しています。それが2014年に【カリフ制再興を宣言】した【「イスラム国(IS=Islamic State)」】です。

アブー・バクル・アル=バグダーディー
【「イスラム国」】は人間によって設定された【国境を否定】し、一定の領域に囲い込んだ人々によって構成される【国民国家を否定】し、【民主主義】という「人間が人間を支配する制度」を【否定】します。彼らが主張するのは、既存の国民国家制にかわり、カリフという指導者が【神の法】によって【世界を一律に統治するカリフ制】の正統性です。

2017年に【イラクのモスル】と【シリアのラッカ】という【二大拠点を失った「イスラム国」の勢力】は、もはや【下火であるかのように見えます】。

しかしたとえイラクとシリアで下火になろうと、彼らが【世界中に蒔いた火種】が完全に消えることは、少なくとも近い将来にはありえません。

なぜなら【「イスラム国」の掲げる理想】は、世界に18億人いるとされる【イスラム教徒全員にとっての理想】だからです。

それは彼ら自身が【自主的に抱いた理想ではなく】、彼らが崇拝する【絶対的な神によって】その実現にむけて尽力するように【命じられた理想】です。「イスラム国」は世界中のイスラム教徒たちが忘れかけていたその理想を、カリフ制再興によって思い出させ、その実現が決して夢ではないことを証明して見せました。…

イスラム教徒にとっては【国境も国民国家も民主主義もグローバル化も】、所詮は【「人間の産物」】にすぎません。しかし【イスラム教はそうではありません】。イスラム教徒にとっての【イスラム教】は、【神が人間に恩恵として与えた導き】です。【神の恩恵であるイスラム教が、人間の産物である民主主義に優越する】のは、彼らにとっては「当然のこと」です。私たち人間には「確かな真実」がわからないのに対し、【神は全知全能】だからです。…

世界には【様々な価値観】を持つ人々がいます。その中には私たちにとって好ましく、憧れの対象となるような人々もいれば、全く関わりたくないような人々もいます。私たちは一般に、それを【「多様性」】という言葉で【肯定的に受け入れ】ます。しかし世界にはこの【「多様性」を否定的に捉え、世界はひとつの価値観に収斂されなければならい】と考える人々もいます。【イスラム教という宗教は後者】に属します。』

古代にあった「資本主義」と「社会主義」の違いのもと
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、そのタイトルにあります通り、「イスラム教の論理」について書かれた書物になりますが、その「イスラム教の論理」とは、「イスラム教の教え」や、それに基づいた「イスラム法」を遵守しようとすればするほど、どうしてもイスラム教徒の方々にとっては避けることができない“巨大な障壁”が目の前に現れることになってしまうのですが、そんなイスラム教徒の方々にとっての「苦悩」や「覚悟」といったものが何であるのかを理解することができる良書となります。

さて、今回は、最近注目されている中東問題とも密接に関わってくる「イスラム教」についての書物のご紹介になりますが、まずは、基本的なことになりますが、世界中にある様々な宗教は、「啓典(けいてん)」(=神の啓示を記した書物)があるのか無いのかによって大きく分類することができます。

「啓典」がある宗教を「啓典宗教」と呼びますが、この「啓典宗教」にとって最大の問題となるのが、神さまの啓示が書かれた書物が実在しているけれども、果たして本当に、その神さまって存在しているの?という疑問です。つまり、「神は存在するのかしないのか」ということが非常に重要になってきます。
ですので、もしも、神さまなんか存在しない、と考えるのであれば、それはすでに信者ではないことになります。
これを「数学」で考えますと、まず最初の前提として、「神は存在する」という仮定があって、それ起点として論理的に説明し、証明していくことになります。
これは、哲学用語で「オントロジー(ontology)」と呼ばれるもので、古代ギリシャを起源とする「存在論(オントロジー)」のことになりますが、「啓典宗教」は、そのギリシャ由来の「存在論(オントロジー)」が根本にあり(=つまり、多大な影響を受けているということ)、「神は存在する」とした上で、その論理の構築がなされている宗教であるということがポイントとなります(→「文系アタマ」では、理解することさえ出来ないのが「宗教」です)。

余談になりますが、紀元前4世紀のアレクサンドロス大王(アレクサンダー大王)は、古代ギリシャのマケドニア王国の王様で、ペルシャ(現在のイラン)を征服し、さらに東へと進みインドの外辺にまで支配下に治めましたが、

その家庭教師がアリストテレスで、アリストテレスが確立させた「形式論理学」は、その後約2000年もの間、絶対的な完全論理として、特に西洋世界において君臨します(→西洋の「ギリシャ論理学」 VS 東洋の「インド論理学」)。
ところが、その絶対的な完全論理であるはずのギリシャ論理学を、真っ向から否定するインド論理学が存在していました。これは以前に書かせて頂いておりますので、そちらをご参照くださいませ。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆「小我」に囚われているのが左翼リベラルです
☆「小我観」に満ち溢れている「某machiko」 ~ お子様が哀れでなりません(笑)

ミリンダ王とナーガセーナ
それではお話を元に戻しまして、先日のところで(→“「朝鮮総連」と「自治労」と「日教組」のために創られた”のが、実は「自衛隊」なんです!!!)、ロシア・中国・北朝鮮(=南朝鮮も含む)・イランといった、いわゆる“ならず者国家”が現在も存在していて、世界平和が脅かされ続けていることについて書かせて頂きましたが、それら4つの国家の共通点が、何なのかということを考える際に、「ポリス(πόλις)」を理解しておくことが必要とも書かせて頂きました。



① ロシア : 「ロシア連邦(Russian Federation)」
② 中国 : 「中華人民共和国(People's Republic of China)」
③ 北朝鮮 : 「朝鮮民主主義人民共和国(Democratic People's Republic of Korea)」
④ イラン : 「イラン・イスラム共和国(Islamic Republic of Iran)」

古代ギリシアの哲学者プラトンの著書『国家』(その副題は「正義について」)のタイトルである『国家』を意味するギリシア語の「Πολιτεία(politeia ポリテイア)」をラテン語訳した言葉が、古代ローマの共和政時代の名称であるレス・プブリカ(res publica)で、「公共の事」、「公共の政府を持つ国家」の意味があり、もともとは特定の個人や階級のためにではなく、全構成員の共通の利益のために存在するものとされる政治体制を指した言葉となります。英語の「republic」(リパブリック)の語源となるものです。


そのギリシア語の「Πολιτεία(politeia ポリテイア)」の語源が、「ポリス(πόλις)」で、一般的に「都市国家」と翻訳されています。
ここで、比較的新しい学問分野である「比較経済学」の興味深い論文をご紹介させて頂きたいのですが、何を比較しているのかと申しますと、「資本主義経済システム」と「社会主義経済システム」とを比較・研究するもので、今回ご紹介する論文は、それら大きく2つの経済システムの相違に見られるようなものが、実は古代から既に存在していたのではないか?という仮説に関するものになっていて、今後の研究成果が楽しみなテーマでもあります。

☆『比較経済学が開く歴史的地平』 ジェラール・ロラン
要点だけ少し抜粋させて頂きますと、
『要旨 : 本稿は、古代の時代から 2 つの異なる種類の制度システムが存在していたことを示す証拠を提示する。1 つは、古代中国、古代エジプト、インカ帝国などの領域国家に存在した中央集権的計画システムに似た制度システムである。もう 1 つは、地中海諸国だけでなく世界中の都市国家に存在し、私的所有権が保護された、強い市場制度をもつシステムである。本稿では、このような異なる制度クラスターが古代から存在したことを示す新しいデータベースを概観し、それらの関係について分析する。 』
つまり、前者が「社会主義経済システム」に通じるものであり、後者が「資本主義経済システム」に通じるものとなります。
『 社会主義システムは、生産手段を国有化することと、資源配分メカニズムとして市場を中央集権的計画化に置き換えることを主張したマルクス主義イデオロギーと切り離すことができない20世紀の現象であると一般的に考えられている。このことは、これら 2 つのシステムは工業化の後に初めて出現した、という印象を与える。人類は20世紀を社会主義と共に歩んだ、そして社会主義は劇的に失敗した。しかし、工業化に先立つずっと以前に歴史をさかのぼり、最初の国家が形成された時代にまで目を向ければ、比較経済学が20世紀に注目して検討してきたと同じくらい完全な形で、経済システムの間に存在する相違を見出すだろう。 』
『 古代世界をより詳細に見ていくと、中央集権的計画経済にとてもよく似たシステムが存在していたことに気づく(エジプト、中国、インカ帝国統治下のペルーなどにおいて)。そこでは、土地の私的所有は存在せず(土地は皇帝または統治者に帰属した)、農産物や工芸品は政府によって配分されていた。市場はほとんど発展していなく、外国貿易は政府によって管理されていた。』
『 一方で、古代メソポタミア、アテネ、メキシコのアステカ、チャンパ王国(現在の南ベトナムをほぼカバーする)のように、土地が私的に所有され、国内的にも国際的にも市場が発展し、明らかに市場経済に似た経済も存在していた。これらを「市場システム」(market systems)と呼ぶことにしよう。後述の通り、多くの国は、これら両システムの間に位置づけられる。』
『 本稿では、古代や最初の国家が形成された時期に見られる国家主義システムと市場システムとの間の大きな相違を特徴付けることを目的として、史学および考古学の研究に基づいて構築されたデータベースを提示する。我々が示す資料によって、これら 2 つのシステムは20世紀の社会主義と資本主義との相違に匹敵するほどはっきりと異なる制度クラスターを形成した、ということが明らかにされる。たいていの場合、これらの異なるシステムは、現代的な産業技術が存在せず、労働(特に奴隷労働)と土地が主たる生産要素であった農村社会において、作動していた。
興味深いことに、これら 2 つの生産要素には異なる法的な手続きが存在する。市場システムにおいては、土地だけでなく奴隷も私的に所有されていた。国家主義システムにおいても、奴隷が広く使われていたが、彼らは国家のために働いた。家計には奴隷を取引する権利がなく、そのための市場も存在しなかった。国家主義システムでは、土地は国によって所有されており、そのための市場は存在しなかった。市場システムでは、特に財産権の紛争をめぐる市民間の水平的な対立に対処できるように、法律制度が設計されていた。国家主義システムでは、秦王朝時代に発展した中国の「法家」思想のように、法律は本質的に統治者が市民を抑圧するための道具であった。市場システムと国家主義システムの間には、政治制度においても顕著な相違があった。メソポタミア、古代ギリシャ、古代ローマ、ベトナム南部のチャンパ王国、メキシコのアステカの都市国家におけるように、市場システムはしばしば都市国家において構築された。対照的に、古代エジプト、中国、またはインカ帝国などにおけるように、国家主義システムはいつも領域国家において構築された。後者のシステムでは、権力の集中がはるかに進み、行政の拠点を除けば、都市は発展していなかった。』
『 このような法律制度および政治制度の帰結として、政治体制の中における、また政治体制の間における財の私的な取引は、国家主義システムよりも市場システムにおいてはるかに発展した。社会学的な側面においても、重要な相違が存在する。社会学的な相違の中には、制度上の相違の結果として生じたものもあれば、制度上の相違を生み出す原因となったものもある。商人の役割は、国家主義システムよりも、市場システムにおいてはるかに重視されていた。また、市場システムにおいては、民族が多様であり、外国人に対してもより寛容であった。』
と、こんな感じになりますが、さきほどの“ならず者国家”が、実は「ポリス(πόλις)」と呼ばれる「都市国家」に由来する側ではなく、領域国家の国家主義システムに由来する側に属する国々であることにお気付きになられたのではないでしょうか? それでは、本日はここまでとさせて頂きます。
続きは次回に♥
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