2019-09-22 (Sun)

本日のキーワード : 効用
効用(こうよう、英: utility)とは、経済学の基本的概念であり、各消費者がある財やサービスを消費することによって得ることができる主観的な満足・欲望充足(への貢献)の度合いのこと。

本日の書物 : 『アベノミクスが変えた日本経済』 野口 旭 筑摩書房
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 バブルが崩壊した【1990年代以降の日本経済】においては、【民主党政権が終わる2012年頃にいたるまで】、ほぼ【20年にもわたる停滞が続いた】。この長期経済停滞の時代に、日本経済は文字通り【縮小均衡に陥っていた】。【その異常さ】は、その間の【日本の所得の推移】と【他の先進諸国のそれ】とを【比較すれば明らか】である。
日本以外の先進諸国の名目GDPは1990年代以降も相応に拡大し、【多くの国】ではその後の20年の間に【ほぼ倍増あるいはそれ以上】になっている。それに対して、【日本の名目GDPのみ】は、その間に【まったく停滞し続けていた】。

その差は、この時期に目覚ましい成長を遂げた新興諸国との間では、より一層大きくなる。…

☆Gross domestic product (GDP)合計、百万米ドル、1990〜2018 OECD
【同様な傾向】は、その間の【賃金動向】においても確認できる。【アメリカとイギリス】では、1990年からの20年間に、【賃金水準がほぼ倍増】している。【ドイツやフランス】でも、同時期に【賃金が約1・5倍】になっている。それに対して、【日本のみ】が1990年以降に【賃金の伸びが顕著に停滞】し、【1997年頃からは低落さえしている】のである。


☆賃金減 日本だけ OECD調査/過去21年間で8%マイナス/他の主要国は大幅増/景気回復へ 賃上げ・安定雇用こそ
【90年代以降の日本経済のもう一つの特異性】は、【財政状況】にある。その時期の【日本の政府財政】は、上述のような名目所得の停滞と、とりわけ1990年代に頻繁に行われた景気回復のための財政出動によって、【ほぼ一環して悪化】した。図表1―4は、政府総債務のGDPに対する比率の推移である。他の先進諸国のそれが、ほぼ横ばいあるいは緩やかに低下する中で、日本のそれのみが、1990年代を通じて突出して上昇し続けた。

【日本経済】は以上のように、【他の先進諸国とはまったく異なり】、【1990年代以降】にほぼ【継続的に縮小し続け】、【逆に政府債務のみは突出して増加し続けた】。1990年代後半から2008年のリーマン・ショックまでの時期の【世界経済】は、しばしば【大安定(Great Moderation)の時代】と呼ばれ、【多くの国でインフレなき経済成長が実現】されていた。そうした中で生じた【日本経済の長期低迷は、きわめて特異なもの】であった。

この日本の長期経済停滞の原因については、後述のように、1990年代末頃から、経済学者やエコノミストたちの間で、様々な議論がなされることになる。【その議論の焦点の一つが「物価」にあった】。
【日本経済】は、この時期以降、他のどのような国も1930年代の世界大恐慌期以来まったく経験することがなかった、【きわめて特異なマクロ経済状況に陥っていた】。それは、【デフレーション】、すなわち【継続的な物価下落】である。』

普通に所得を増やしたいのであれば、まずは経済成長が必須です
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、そもそも「アベノミクス」って一体何なのか、それによって、日本経済がどのように変わったのか、あるいは変わろうとしつつあるのか、それをマクロ経済学の観点から、キチンと分かりやすい形で解説がなされている書物で、本書をご覧頂くことで、「アベノミクス」が始まった直後のセオリー通りの展開や、2014年の消費税率引き上げによる大失敗が理解でき、そして、目下、世界経済が混沌とする中で予定されている、「悪夢の民主党政権」同様の愚策中の愚策である消費税率の再引き上げを行うことが、いかなる意味を持っているのかを、読者御自身のアタマで考えることができるようになる良書になります。

さて、さきほど、日本の賃金のお話のところで、あえて「赤旗」の記事を参照として挙げさせて頂いておりますが、日本の賃金の伸びが他国のそれとの比較において、著しく劣後しているという点に焦点を当てていることは非常に正しいと思います。
ところが、リンク先の記事の内容をご覧頂くと分かるのですが、命題そのものが明らかに間違っています。該当部分を転載させて頂きますと、次のようになっています。
「 大企業はアベノミクスの恩恵を受け、史上最高益を稼ぎ出してきました。一方、労働者は「国際競争力強化」を口実に低賃金を強いられ、労働市場では、非正規化が進んできたのが実態です。
いま求められているのは、家計を応援し格差と貧困を正し、国民が暮らしの明日に希望のもてる政治に転換することです。暮らしと経済を立て直すには、賃上げと安定した雇用の拡大が必要です。大企業がため込んでいる400兆円を超える内部留保のほんの一部を使うだけで、賃上げや正社員化を実現し、新たな雇用をつくることができます。
中小企業への支援を抜本的に強めつつ、最低賃金を直ちに全国一律1000円に引き上げ1500円をめざす必要があります。国民の所得が増え中小企業を含む企業経営全体が改善していけば、税収も社会保険料収入も増えます。人間らしく働けるルールの確立で、健全な経済成長への好循環をつくりだすことを日本共産党は提言しています。」
要するに、
(A) 賃金が上昇しない
のは、
(B) 大企業がため込んでいる
から
であり、
(B) 大企業にため込まさない
のであれば、
(A) 賃金は上昇する
という風に考え、まさにそのように主張していることになります。どうも、マルクス主義者というのは、明後日の方に物事を考えるのが得意なようですね💗
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆財務省と日銀とマルクス経済学

同じ屁理屈の例を挙げてみますと、とある女性が、
(A) ケーキを食べ過ぎて肥満になった
のは、
(B) ケーキが売られている
から
と考え、だから、
(B) ケーキを販売禁止にする
のであれば、
(A) 痩せる
と主張しているのと同じになります(笑)

賃金を上昇させたいのであれば、答えは簡単で、「経済成長」を成し遂げれば良いだけ、です。もし、長期停滞がなかったのであれば、他国と同じように、私たちの日本も、所得が倍増になっていたのではないでしょうか?

さて、ここからは昨日の続きになりますが、私たち日本人は、ポール・クルーグマンが20年以上も前に、我が国の惨状を見て、提唱した理論を良く知っておく必要があると考えているのですが、

ポール・クルーグマン
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆20年以上前の失敗から何一つ学べない財務省・日銀 ~ 「緊縮財政」と「消費税増税」


☆「It's Baaack:Japan's Slump and the Return of the Liquidity Trap」By Paul R.KRUGMAN

そこで、ポール・クルーグマンが、何をせよとアドバイスしているのかを、山形浩生氏の訳による「復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲」から確認しているところになります。

☆「復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲」山形浩生訳
ところが、読み進めていきましたところ、何だか意味不明な数式が登場してきました。

『 財が一つで、representative agent 経済(ただし、エージェントはそれぞれ自分の消費分は他人から買わなきゃいけない)を考える。はじめは、財が非弾性的に供給されるものとしよう。つまりそれぞれのエージェントが一定のほどこし yt を毎期ごとにもらえるものとしよう。具体性をつけるため、効用関数は以下のような形を取るものとする。』


ここで、ポール・クルーグマンは、自分の考えを論ずるにあたり、上記の簡易な経済のモデルを前提として提示し、その上で自説を展開していくことになるのですが、この数式を見て、それ以降の文章の内容がチンプンカンプンになってしまう方が、結構いらっしゃるのではないかと思います。「数学アレルギー」というものなんでしょうか。
でも、当ブログでは、本当は誰にだって理解できる内容であって、その理解に至るための前提となる情報が欠落しているだけなのではないかと考えています。
そこで、この難関(?)を突破するために、少し脱線することとさせて頂きます。
文章からも明らかなように、さきほどの数式は「効用関数(utility function)」と呼ばれるものになります。「効用(utility)」とは、経済学の基本的概念で、「財やサービスの消費から得られる“主観的”な満足度」という意味になり、それを何らかの数式で表現した「函数(関数)」だということになります。
「函数(関数)」は、自動販売機のようなイメージのもので、何かを入れると、何かが出てくる装置であり、単なる「函(箱)」です。
その「函数(関数)」については、一旦後回しにすると致しまして、まずは「効用」について確認しておきましょう。
さきほど、ケーキのお話がありましたので、今度は「ケーキの食べ放題」をイメージしてみて下さい。

お腹を空かせて、「ケーキの食べ放題」にやって来たとします。
最初の1個目は、空腹でもあり、もちろん満足度は高いですよね?そこで、その満足度を点数にして表してみます。
1個目の満足度 : 6点
続いて、2個目も美味しく頂きましたが、1個目よりはやや低いので、
2個目の満足度 : 5点
同様に、次々とケーキを頂くにつれて、段々とお腹が満たされていって・・・
3個目の満足度 : 4点
4個目の満足度 : 3点
5個目の満足度 : 2点
となったとします(あくまでも、仮定でのお話になります)。
ここで、満足度を「効用(U)」として、食べたケーキの個数との関係をグラフにしてみますと、次のような感じになります。

ケーキを食べるごとに、「効用」は足し算されていきますので、増加していくことになるのですが、感覚的にもご理解頂けるとおり、ケーキ1個あたりの「効用」の増え方は異なっています。
で、今度は、「おカネ」のことも考えて頂きたいので、「食べ放題」という前提条件をなくしてみましょう。つまり、ケーキを1個食べるごとに、その代金を支払う、つまり「消費」する必要がある場合をイメージしてください。恐らく、「食べ放題」の時のような満足度は得られないのではないでしょうか?(お財布の中身が気になって)
繰り返しになりますが、「効用(utility)」とは、経済学の基本的概念で、「財やサービスの消費から得られる“主観的”な満足度」という意味で、さきほどの例では、ケーキを購入(=消費)し、そこから得られる満足度(=効用)のことになりますが、そのケーキを次から次へと購入(=消費)していった場合、ケーキを1個を追加で購入(消費)するときに、そこから得られる満足度(=効用)の増加分のことを経済学においては、「限界効用(Marginal utility)」と呼びます。
ちなみに、ここで言うところの「限界」というのは、「ケーキを食べ過ぎちゃって、もうムリ~」というような意味ではなく、経済学における「限界」、つまり「微分」のことになります。
いわゆる「限界革命」で大きな功績を残した「新古典派経済学(Neoclassical economics)」が、微分積分学を用いて数理的に分析する経済理論を構築したことに由来しています。

詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆偽物の経済学であるマルクスの理論を破壊した、経済学の本物の革命

☆「文系の経済学」と「理系の経済学」 マルクス経済学はどっち?

☆ネオ・クラシカルとニュー・クラシカルとケインズ経済学

それでは、その経済学の「限界(微分)」って、一体何なのでしょうか?

ということで、本日はここまでとさせて頂きます。
続きは次回に♥
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