2019-07-24 (Wed)

初代大蔵省庁舎
本日のキーワード : 大蔵省官僚、財務省官僚
大蔵省(おおくらしょう、Ministry of Finance, MOF)は、明治維新から2001年(平成13年)1月6日まで存在した日本の中央官庁である。後継官庁は財務省と金融庁。前近代の律令制による大蔵省も奈良時代の大宝律令から明治維新まで存続していたため、「大蔵省」という名称は1300年の長きにわたって用いられたことになる。
本日の書物 : 『経済で読み解く日本史⑤ 大正・昭和時代』 上念司 飛鳥新社
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 朝鮮特需のおかげで1950年から1952年まで日本の経済成長率は10%を超えました。その後、1年足らずの景気後退局面を挟んで「神武景気」(1954年12月~1957年12月)が続きます。そして1956年、日本のGDPは戦前の1940年のGDPを上回り、日本政府は『経済白書』の序文において「もはや戦後ではない」と宣言しました。

ところが、【1958年に転機が訪れます】。それまで設備投資とほぼ同額で伸びていた【GDPが、設備投資の額を下回るようになった】のです。後の【池田勇人(いけだはやと)】首相の経済顧問で大蔵官僚だった【下村治(しもむらおさむ)】は、この状況を次のように解釈していたそうです。

池田勇人

下村治 (アサヒグラフ 1953年9月23日号)
日本経済は31年度(1956)あたりまでは、いわば【供給力不足の経済】であった。現在の供給能力に比べて【総需要は超過】し、high pressure の状態にあった。(出典:『在庫論争・経済成長論争の問題点』篠原三代平/理論・計量経済学会[編]1959年)

☆『在庫論争•経済成長論争の問題点』篠原 三代平
つまり、【1956年までが戦後復興の時期】であり、生活に必要な物は不足し、作れば何でも売れる状態だったのです。ところが、1960年へと近づくにつれ、次第に戦後復興としての需要は色褪(いろあ)せ、それまでのビジネスモデルが通用しなくなってきました。下村氏に言わせれば、「これまでの供給力不足経済は【供給力過剰経済に転換】しはじめた」(前掲論文)ということになります。
この頃、1950年からの朝鮮特需を経て急拡大した日本企業には、【以下の3つの弱点】がありました。
① 少なすぎる内部留保
② 多すぎる借入金
③ 民間銀行の日銀依存
先ほど引用したトヨタ自動車の事例のように、ある日突然、アメリカ軍から巨額注文を受けてしまった場合、納期に間に合わせるためには銀行から巨額の資金を借り入れて即座に生産ラインを増強する必要があります。当時の企業の財務基盤は脆弱であり、投資資金は多額の借入によって賄(まかな)うしかなかったのです。これが、①と②のことを指します。
また、資金を貸し出す銀行のほうは、突如として湧いた巨額資金の需要に応えるため、後から預金をかき集めていたのでは到底間に合いません。そこで、日銀に泣きついて巨額資金を瞬時に融通してもらうという荒業を使います。これが③で指摘されていることです。

こうしたビジネスモデルは、生産設備がフル稼働する好景気のときには大変頼もしいのですが、生産設備が過剰になってしまうと収益率が低下し、企業の経営は悪化していきます。

このような状況を【当時の日銀や官庁エコノミスト界の大ボス】である【都留重人(つるしげと)】などは、一貫して【「不健全な異常事態」であるとみなしていました】。

都留重人

『日本銀行百年史』には、「本行はどのような観点からオーバーローンの是正を必要と考えていたかという点については、一言でいえば、【『金融の正常な在り方に反する』とみていた】からである」といった記述もあるくらいです。

これに対して【下村】は、「日本の経済成長が国民の堅実な生産能力の増強によって支えられている限り、【通貨の均衡が破れたとしてもインフレは起こらず】、また【たとえ起こったとしても、これは病的なインフレではなく国民生活の高度化を意味するもの】である」と確信していました。

下村は1934(昭和9)年に東京帝国大学経済学部を卒業後大蔵省に入省し、1936(昭和11)年から1年ほどアメリカに駐在しました。このとき、刊行されたばかりの【ケインズ】の【『雇用・利子および貨幣の一般理論』】を入手したそうです。1948(昭和23)年からは結核で休職を余儀なくされました。そのとき、病床で『一般理論』を徹底的に読み込み、【『経済変動の乗数分析』】という論文をまとめました。この論文で1956(昭和31)年に東北大学より経済学博士号を取得しています。

ジョン・メイナード・ケインズ



下村が【金融政策の基本方針として提起】したのは次の2点です。

① 【管理通貨制度】の利点を最大活用して、企業の生産力の増加(=設備投資の増額)に応じた【日本銀行券の増発】を行うこと。これによって、【供給能力の限界と有効需要の増加をバランスよく調節管理】し、【経済成長を金融面からサポートする】とともに、【安定的な物価上昇を誘導する】こと。
② 【日本銀行券の通貨供給方式】としては、【日銀の買いオペレーションを先行させる】こと。そして、その円滑化のために【政府が主体となって低金利政策(=公定歩合の引き下げ)を敢行】し、市中金利と均衡金利の均衡を図り、【金利体系の歪みを是正】すること。これによって証券市場の健全な発展を促し、【国債発行を主とした財政運営の基盤を築くこと】。 (出典:論文「下村治経済理論の一考察」影浦順子)

☆『下村治経済理論の一考察 ―経済成長と金融調整のあり方をめぐって―』 影浦順子
【日銀】が【オーバーローンだと問題視している点】について、【下村】は民間部門が異常な投資行動をしたのではなく、【政府や日銀が通貨価値の安定にこだわって引き締め気味のバイアスがかかっていることが原因】だと考えました。

下村はいみじくも「【通貨価値の安定】は、経済の健全な発展にとって、【必要な条件である】けれども、【十分な条件ではない】 」(『経済成長実現のために』下村治、宏池会)と述べています。

【通貨価値の安定】とは、、【経済成長の“手段”であって“目的”ではない】のです。』

「日銀理論」の教祖 都留重人(つるしげと)
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、私たちの日本の歴史を、経済・金融の面を切り口としてみた場合、これまで学校の授業でお勉強させられ、「訳の分からない歴史」でしかなかったものが、普段の日常感覚で国史の流れをスッと、いとも簡単に理解できる、という良書で、また、多くの方々が勘違いしていると思われる「おカネ」というものについて、非常に正しい認識ができるようになる、お薦めの書物の第5巻になります。

さて、本文中に、東京大学の(あ)法学部ではなく、キチンとした東京大学の経済学部を卒業(修士号取得)し、大蔵省(現在は名前を変えられ「財務省に成り下がりました」がw)に入省し、その後、独学で「ケインズ理論」を勉強し、世界中で通用する「博士号」を取得した、経済学者の下村治のお話が書かれていました。
こんな人物が、かつての大蔵省にはいたのですが、非常に危惧されることに、現在のように“財務省に格下げ”された官僚の中には、「国家を背負う」気概もなく、只々、日々勤務時間をやり過ごすだけの、岡本薫明(おかもとしげあき)のような“小物”でさえ、なんと事務次官になる(しかも、不祥事を起こしながら2年も連続してその地位に居座れる!?)ことができるほどの体たらくな、三流官庁・三流官僚と国民から見下されてしまっているのですが、下村治さんの「足の爪の垢」でももらっては如何でしょうか?

岡本薫明(おかもと しげあき)
さらに、当ブログが要注意人物としている、当時の日銀や官庁エコノミスト界の大ボスとされる、都留重人(つるしげと)の名前が登場していました。そのことは、つい先日も書かせて頂きましたので、そちらをご参照頂きたいのですが、バリバリの社会主義者だった人物になります。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆「消費税増税」というアベノミクス破壊作戦 ~ 参院選は与党が大敗するでしょう
☆デフレ不況を抜け出す解決策 ~ それと真逆の愚策 「消費税増税」
☆財政再建には名目成長率引き上げが不可欠なのに、消費増税で名目成長率を引き下げるという愚かな行為
☆「日銀が経常損失を計上する状況は、大変な事態だ」と考えてしまう「アホ」

☆金閣寺の「金」は、金日成の「金」!? ~ 金閣寺とダルマとチュチェ思想
☆消費増税に大反対の“民意”を示しましょう!! ~ 戦前の「革新官僚」由来の「増税ファシズム(増税全体主義)」への宣戦布告
☆およそ500年前の世界の基軸通貨は「銀」でした
☆歴史が示す「革新主義(Progressivism)」の大きな過ち ~ 戦争を引き起こした「増税ファシズム(増税全体主義)」

と、このように、当ブログでは特別扱いをさせて頂いている「都留重人(つるしげと)」ですが、これからも、まだまだ書かせて頂く予定になりますが、それほど我が国にとって害悪をもたらした確信犯の一人であると考えられるからです。そう、山本五十六(やまもといそろく)と同様に。
ところで、その都留重人(つるしげと)ですが、本書でも御紹介されているのですが、「日銀理論」の教祖さまになります(笑)

その「日銀理論」というものは、ある種の宗教とも言えるもので、単なる思い込みであって、そもそも、「おカネ」とういうものが何であるのかを理解できない人間が、まんまと騙されてしまう「教え」に他なりません。
本文中に次のような文章が書かれていました。
「 また、資金を貸し出す銀行のほうは、突如として湧いた巨額資金の需要に応えるため、後から預金をかき集めていたのでは到底間に合いません。そこで、日銀に泣きついて巨額資金を瞬時に融通してもらうという荒業を使います。これが③で指摘されていることです。」
「銀行業」というものは、多くの方々が普通にイメージする一般的な企業とは違って、帳簿上のやり取りだけで、つまり、口座に数字を書き込むだけで商取引が完結します。


で、日本銀行もそれと同じで、「銀行の銀行」として存在していて、日本銀行の職員の給与や経費の支払いは、帳簿上のやり取りだけで、口座に数字を書き込むだけで完結します。

☆「バーチャル店内見学」日本銀行函館支店
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆「日銀が経常損失を計上する状況は、大変な事態だ」と考えてしまう「アホ」

「日銀の独立性」という言葉の意味を、トンデモな勘違いをしてしまう残念な方々を、たまに拝見致しますが、本文中にも書かれていましたように、「手段」と「目的」の区別さえできていない残念な方々と言えます。

『 日銀の政府からの独立性に関する議論も、忘れてはいけません。すでに世界の周回遅れとなってしまっています。
思考停止の野党やマスコミは日銀の政府からの独立性が明確化された1998年施行の新日銀法を金科玉条にして、政府の日銀への介入を批判してきましたが、これはまったくおかしな議論です。
安倍総理は従前から「政府と日銀の関係について政策目標は同じくすべきだ。ただ、その手段は日本銀行が自由に使う。あるいは日本銀行の使命として物価安定もあるが、ほかの国では雇用を最大化するというのも入っている。そういうことも考えていくべき」と主張してきました。
まさにその通りであり、「目標の独立」と「手段の独立」を分離する形での「世界標準の独立性」を確保するための日銀法の改正です。そうしない限り、金融政策にしっかり取り組むことができず、デフレ脱却が危うくなってしまいます。
FRBのバーナンキ元議長も、「金融政策の目標は政治的に設定されるが、目標達成へ金融政策をどう実行するかは、政治的なコントロールから自由であるべきだとの幅広いコンセンサスが世界的にできあがってきた」と過去に述べています。
また、「『目標の独立性』(goal independence )と『手段の独立性』(instrument independence)の違いは有用だ。中央銀行が自由に目標を設定できるという目標の独立性を民主主義社会で正当化することは困難だ。しかし、今日これから話すように、中央銀行が干渉を受けずに適切な金融政策を実施するできるような手段の独立性は、経済安定のために極めて重要だ」とも指摘しています。これがまさに世界標準なのです。』
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆「日銀の独立性」を勘違いしてしまう日本人

それでは本日の最後に、「おカネ」が何であるのかを理解するために、ほんの少し前の我が国の状況を確認してみましょう。

『 日本最初の銀行は、…第一国立銀行となった。社屋である三井ハウスを当初建てた三井組と、同じく両替商として勢力を誇っていた小野組とが、大株主として経営に当たることになった…大蔵省を退いた渋沢栄一も…株主となり、三井と小野の調整役と事務責任者を兼ねる総監役に就任した。
つづいて…鹿児島の士族たちにより大坂第五国立銀行、翌年…新潟で第四国立銀行、さらに…横浜の出資者を中心として第二国立銀行が開業した。
第五国立銀行は現在、三井住友銀行、第四国立銀行はそのまま第四銀行として残り、また、横浜国立第二銀行は横浜銀行となっている。第三国立銀行は大坂で設立されたが間もなく廃業した。
こうして、政府大蔵省の督促にもかかわらず、国立銀行の設立は、第三国立銀行を除き、四行に止まってしまった。まさに政府の誤算といえる。
失敗の原因は、設立要件と発行紙幣の兌換にあった。
まず設立要件を見てみよう。
大蔵省が当初考えたのは、西欧風の融資と預金を主な柱にした銀行だったが、さらに巷に溢れている太政官札の回収という意図もあった。 そのため、資本金の10分の6は、政府紙幣(太政官札など)をもって政府に上納し、同額の公債証書(金札兌換公債証書)を受け取る。これを抵当として国に納めて、同額の銀行紙幣を受け取り発行する。また残りの10分の4は、本位貨幣(金貨)を用意して兌換に応じるとした。つまり、それらの紙幣は不換紙幣である明治通宝札とは異なる兌換紙幣であった。』
詳しくはこちらをご参照💗
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