2019-07-23 (Tue)

本日のキーワード : フィリップス曲線
MONIAC(Monetary National Income Analogue Computer 貨幣的国民所得自動計算機)は1949年にアルバン・ウィリアム・フィリップスによって開発されたアナログ計算機。
たくさんのタンクや水の流れは、銀行、支出、貯蓄、外貨準備など、経済活動のさまざまな側面を表す貨幣の流れを水によって視覚化する。MONIACが開発された当時、真空管式のコンピュータは高価で故障が多く、経済活動の視覚化のような用途にはまだ非力だった。
MONIACは全部で14台が製造された。
ニュージーランド準備銀行(Reserve Bank)付属の博物館とイギリスのサイエンス・ミュージアムでロンドン・スクール・オブ・エコノミクスから寄贈されたMONIACが動態保存される。
本日の書物 : 『経済で読み解く日本史⑤ 大正・昭和時代』 上念司 飛鳥新社
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 当時、【金本位制への復帰】は【どの国にとっても大きな課題】でした。特に大戦バブルの崩壊後、【関東大震災】が襲い経済的に疲弊していた【日本にとっては極めて重要な問題】でした。

1928(昭和3)年にフランスが金本位制に復帰すると、いわゆる列強で金本位制に復帰していない国は日本だけになってしまいました。まさにこのあたりから、日本における【「金解禁論争」】が本格化します。

日本における【旧平価解禁派】の筆頭は、政策当事者でもあった大蔵大臣の【井上準之助(いのうえじゅんのすけ)】です。井上はもともと「旧平価による金本位制復帰には時期尚早」という論を唱えていましたが、濱口内閣の大蔵大臣に就任すると突如として「旧平価による即時金本位制復帰」を主張するようになりました。

井上準之助
井上のこの主張には、【財界の主流派も同調】しました。特に【「財界世話人」】と呼ばれる、【今で言うM&Aのブローカーのような人々がその中心】でした。代表的な人物としては、【郷誠之助(ごうせいのすけ)】、【池田茂彬(いけだしげあき)】、【結城豊太郎(ゆうきとよたろう)】などが知られています。

郷誠之助

池田茂彬

結城豊太郎
彼らの仕事は、【不況】で【経営危機】に陥ったり、【倒産】したりした企業を「合併」などのかたちで救済、処理することです。大型の倒産であればあるほど動かす金額が大きくなり、自分たちの【実入り】が増えます。つまり、【不況になってたくさんの会社が潰れれば潰れるほど自分たちの儲けも増える】わけです。

【旧平価による金本位制復帰】が【デフレ政策】であり、【不況で倒産が増える】ことはわかっていましたから、彼らが旧平価解禁派になるのは当然でした。【「創造的破壊」という考え方】は、こういった【“ハゲタカ”たち】にその仕事を正当化する【絶好の口実】与えていたのです。

また、【当時を代表する経済学者】であった、【福田徳三(ふくだとくぞう)】、【河上肇(かわかみはじめ)】も【旧平価派】でした。【河上肇】というのは、あの近衛文麿(このえふみまろ)に【マルクス経済学】を仕込んだ師匠です。

福田徳三

河上肇
河上は「恐慌の原因は過剰性にある」と考えており、「恐慌によって供給が削減されることはいいことだ」と発言していました。また、【物価】については、「物価が上がっても給料が上がらないので庶民の生活は苦しくなる」といった、2017年に旧民進党から分裂した各種政党が主張するような、【トンデモ経済論を主張】していたのでした。

しかしあまりにも【トンデモな言説】なので「物価が上昇しているということは、すでに労働者に購買力があるということ。それはつまり所得(給料)が増えているということだ」と石橋湛山(いしばしたんざん)にツッコまれ【一撃で論破】されています。

石橋湛山
しかも、【「物価」と「失業率」は常に逆相関の関係(フィリップス曲線)がある】ので、【物価が上がっている】ということは、【失業も相当程度減っている】ということになります。【社会全体】でみたとき、【インフレのほうがデフレよりもメリットがはるかに大きいことは明らか】です。』

日本では報道されない「フィリップス曲線」を巡る新たな議論
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、私たちの日本の歴史を、経済・金融の面を切り口としてみた場合、これまで学校の授業でお勉強させられ、「訳の分からない歴史」でしかなかったものが、普段の日常感覚で国史の流れをスッと、いとも簡単に理解できる、という良書で、また、多くの方々が勘違いしていると思われる「おカネ」というものについて、非常に正しい認識ができるようになる、お薦めの書物の第5巻になります。

さて、本文中に、戦前の共産主義者で京大教授でもあった河上肇が登場していましたが、つい先日ご紹介させて頂きました書物にもよく登場していますので、そちらをご参照頂きたいのですが、もちろん、大日本帝国を大東亜戦争に引き込んだ連中の一人になります。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆共産主義者とネトウヨ
☆左翼の全体主義者と戦争 ~ ナチズム=ボリシェビズム
☆極左・共産主義者の“転向”と「革新右翼」

で、本日は、本文中にあった「フィリップス曲線」について、少し確認しておきましょう。最近のことですが、以下に示すように「フィリップス曲線」が話題となっています。

☆クドロー氏:シェルトン、ウォラ-両氏は当局のインフレ認識変える
『 クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、トランプ米大統領が連邦準備制度理事会(FRB)の理事に指名する意向のジュディ・シェルトン氏とクリストファー・ウォラー氏について、失業率とインフレ率が逆相関の関係にあるというフィリップス曲線の考え方に異議を唱えていくと述べた。
トランプ氏は先週、シェルトン、ウォラー両氏をFRB理事に指名する意向を明らかにした。シェルトン氏に関しては、過去に示した金本位制に対する見解や、物価安定と最大限の雇用という金融当局の2大責務への懐疑的な見方を巡ってエコノミストらの間で懸念の声が上がっている。同氏は5月、ブルームバーグのインタビューで金融当局の責務について「不明瞭な目標」だと主張した。
クドロー氏は9日、記者団に対し「われわれはフィリップス曲線に対する現状認識に異議を唱えていく」と言明。「私はキャリア全体をこの問題に費やしてきた。この件に関してはトランプ大統領ももちろん同意している。よってこれに関してはジュディ(シェルトン氏)がリーダーとなる。ウォラー氏も同様だ」と述べた。』

☆米FRBの責務、中央銀行として適切か疑問-シェルトン氏
『 トランプ米政権が連邦準備制度理事会(FRB)理事への指名を検討している保守派エコノミスト、ジュディ・シェルトン氏は、議会が決めた米金融当局の責務が中央銀行として適切か確信が持てないとの見解を示した。
シェルトン氏は29日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「この責務を非常に懐疑的に捉えるだろう」と述べ、連邦準備法によって定められた最大限の雇用と物価安定、穏やかな長期金利という責務は「あまりにも不明瞭な目標だ」と主張した。
欧州復興開発銀行(EBRD)の米国代表を務めているシェルトン氏は、特に最大限の雇用という責務について、「それが本当に連邦準備制度の仕事であるかどうか、分からない」と言明した。』

☆クドロー氏、民主党の人気新人議員を称賛-「フィリップス曲線を理解」
『 クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は民主党急進左派の新人、アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(ニューヨーク州)を称賛した。失業率とインフレ率が逆相関の関係にあるというフィリップス曲線の考え方に対し、同議員がクドロー氏同様に異議を唱えたことが理由。
10日の下院金融委員会でオカシオコルテス議員がパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長に質問した内容に触れ、クドロー氏は11日にFOXニュースのインタビューで、「彼女には高い評価を与えなければならない」と述べた。
人気急上昇中のオカシオコルテス議員は、パウエル議長にフィリップス曲線についての見解を尋ねた。フィリップス曲線は、米金融当局が長年にわたり政策ガイドとして参照している。
オカシオコルテス議員は同理論について、「今日の経済で起きている状況をもはや説明できない」と多くのエコノミストが懸念していると述べ、パウエル議長もおおむね同意した。
クドロー氏は11日、ホワイトハウスでも記者団に対して「彼女は正しく理解している」とし、「フィリップス曲線が通用しないことをパウエル議長は認めた。金融当局は政策金利を引き下げるだろう」と述べた。
クドロー氏はFOXのインタビューで、近いうちにオカシオコルテス議員と会い、サプライサイド経済学について話をしたいとの希望を語った。』

「フィリップス曲線」は、アメリカの金融当局が金融政策の判断材料として参照しているのですが、日本銀行の「物価目標2%」というのも、「フィリップス曲線」上の「インフレ非加速的失業率」(NAIRU/Non-Acceelerating Inflation Rate of Unemployment)と呼ばれる自然失業率・インフレ率の水準に到達すると、そこからは失業率はあまり下がらなくなり(つまり、失業率の下限)、他方で加速的に賃金が上昇すると考えられているために、目標として設定されています。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆東京大学法学部には難しすぎる「経済・金融の世界の常識」 ~ 日銀総裁・黒田東彦も、やっぱり理解できていなかったこと

ところが、その「フィリップス曲線」自体に、つまり、失業率とインフレ率が逆相関の関係にあるという考え方そのものに異議が唱えられている、ということになり、今後の議論が非常に楽しみな展開となっています(なぜか日本ではほとんど話題にはなっていませんが・・・)。
波乱万丈のその生涯であったウィリアム・フィリップスは、若いころに電気工学を学び、のちに経済学を学んでからは、その知見を生かして、ケインズ学派の経済の仕組みを、「フィリップスマシン」と呼ばれる「MONIAC(Monetary National Income Analogue Computer 貨幣的国民所得自動計算機)」というアナログ計算機によって表現することに成功しました。

アルバン・ウィリアム・ハウスゴー・フィリップス
で、フィリップスは、1861年~1957年における賃金と失業の関係を調べた結果、ある時期(1861年~1913年)においては反時計回りの動きとなり、またある時期(1948年~1957年)では時計回りになり、その中間(1918年~1948年)では振幅する(時計回りだったり反時計回りだったりする)という調査結果を論文としてまとめ(1958年)、それらの結果について数式で表現しました。

1913年~1948年の失業率に対するフィリップスの賃金の変化率(1958年)
それが、次の数式になります。

または、

です。
「gw」は名目賃金成長率を、「Ut」は失業率を意味しているのですが、負の相関があることが理解できます。
「ln」って何それ?
という方は、「自然対数(natural logarithm)」という言葉を、是非ググってみて下さい。
続きは次回に♥
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