2019-07-22 (Mon)

本日のキーワード : インフレ、実質賃金、名目賃金、古典派経済学
リフレーション(英: Reflation)とは、デフレーションから抜け出たが、本格的なインフレーションには達していない状態のこと。日本語では通貨再膨張とも訳される。あるいは正常と考えられる物価水準よりも低下している物価を引き上げて安定させ、不況を克服しようとする政策そのものをさすこともあり、統制インフレーションとも言う。リフレーション政策(リフレ政策)は後者を現象としてのリフレーションと区別して言う語。
本日の書物 : 『経済で読み解く日本史⑤ 大正・昭和時代』 上念司 飛鳥新社
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 【第一次世界大戦の終結】は、【むしろ世界を不安定化】させました。【歴史教科書】などでは「大国となったアメリカが【大国としての責任】を果たさなかった」という点が【強調】されます。確かに国際政治という観点でみればそうなるでしょう。しかし、【世界を不安定化させたもっとも大きな問題】は、やはり【経済】にありました。【「戦後処理(賠償金問題)」と「金解禁(金本位制復帰)」】です。

第一次大戦の戦後処理は、完全に失敗でした。「ベルサイユ体制」という枠組みにより、ドイツは英仏から搾取され、そのお金は戦時中の借金返済のために英仏を経由してアメリカへ還流しました。
ドイツにおける「領土の割譲」「共和制移行後の政治的社会的混乱」などということだけが、【歴史教科書】のなかで【クローズアップ】されています。しかし【最も重要】なのは、【このときのお金の流れが世界経済の不均衡を生み出してしまったこと】です。

ベルサイユ体制を【金本位制】という観点で見れば、【「世界中の金(ゴールド)がアメリカに吸い上げられる仕組み」】ということになります。それは【同時に、アメリカ以外の国では金(ゴールド)が不足することを意味】するわけです。【金(ゴールド)の不足】は【貨幣の不足】、つまり【デフレ】です。その結果、世界経済は不安定化し、最終的には大恐慌「世界恐慌」(1929[昭和4]年)が起こりました。…

しかし、今思えば、こんなグローバル・スタンダードなど、捨ててしまえばよかったのです。ところが、当時の政府関係者や有力な経済人たちは、【「金本位制に対する絶大なる信頼」を払拭することがどうしてもできません】でした。

その結果、本来戦勝国で賠償金の分配(ごく一部ですが)を受けていたはずの日本までもが、この世界的な不均衡の嵐に巻き込まれ、自ら【「昭和恐慌」(1930[昭和5年])】の罠に嵌まって行ってしまったのです。

もちろん、【政策当局者の大半】が【金本位制への復帰を当然のこととして推進】するなか、【それに異を唱える人】もいました。【現代の「リフレ派」につながる「リフレーション」という言葉は、この時期に生まれた言葉】です。
日銀副総裁の【若田部昌澄(わかたべまさずみ)】氏によると、【リフレーションという言葉の初出】はイギリスの雑誌『The Economist』(1932[昭和7]年2月13日号)にある【「“Reflation” or Bankruptcy」という記事】だそうです。同年4月20日には、イギリス議会下院の「議事録」にも登場しました。…
世界中の国々で、【金本位制への復帰を推進する当局】と、【それに異を唱える元祖リフレ派】の【大論争】が繰り広げられました。日本ではこれを【「金解禁論争」】と呼んでいます。
イギリスでは、あの【ジョン・メイナード・ケインズ】が【大蔵省の見解に戦いを挑みました】。…

ジョン・メイナード・ケインズ
ちなみに、ケインズが「財政政策」にしか言及していなかったかのような【歴史歪曲(わいきょく)】は、【マルクス主義経済学の影響を受けた教科書執筆者の誤謬(ごびゅう)】です。実は、【ケインズ】は【「金融経済学者」】と言っていいほど【貨幣問題に精通していた】ことを付け加えておきます。【ケインズ】は【リフレーションという言葉が生まれる前から、この立場にたって発言していた】のです。』

「古典派経済学」のトンデモ理論
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、私たちの日本の歴史を、経済・金融の面を切り口としてみた場合、これまで学校の授業でお勉強させられ、「訳の分からない歴史」でしかなかったものが、普段の日常感覚で国史の流れをスッと、いとも簡単に理解できる、という良書で、また、多くの方々が勘違いしていると思われる「おカネ」というものについて、非常に正しい認識ができるようになる、お薦めの書物の第5巻になります。

さて、昨日に引き続きまして、ケインズのお話になりますが、ケインズ以前の「古典派」が想定していた2つの公準が、次のようなものになります。
① 賃金は労働の限界生産力(量)に等しい
② 一定量の労働が雇用されている場合、賃金の効用は、その雇用量の限界負効用(負の限界効用/marginal distiliky)に等しい
①の公準は、企業側を主体として、企業が利潤を最大となるように、「実質賃金」と「労働の限界生産力」を比較しながら、「労働雇用量」を決めるであろう、という「需要サイド」の想定です。
逆に、②の公準は、労働者側を主体として、労働者が自身の「効用」が最大となるように、「実質賃金」と「労働の限界負効用」を比較しながら、「労働供給量」を決めるであろう、という「供給サイド」の想定となっています。

上図に示されているように、両曲線の交点が均衡点で、これが「完全雇用」と呼ばれる水準になります。ここで言うところの「完全」というのは、均衡となる実質賃金のもとで、働きたいと考える(その水準でギリギリ満足できる)労働者が完全に雇用されている、ということで、失業者がゼロということではありません。「古典派」においては、一時的な失業(例えば転職中の失業など)と自発的な失業(単に働きたくないので働かない、など)については、その存在を認めていましたが、それ以外の「非自発的な失業」(私たちが普通にイメージする失業で、働きたいのに、どこにも就職先がないような状態)については想定していませんでした。

「古典派」の考え方の肝は、「供給が需要を生み出す」になりますが、上図において、実質賃金がW1の水準にあるとしますと、働きたいと考える人の数はW1Aで、企業が雇用したい労働者の数はW1Bになり、このとき、労働市場はABに相当する需要超過の状態であると言えます。要するに人手不足の状況で、この場合、市場メカニズムの働きによって、実質賃金がW*の水準まで上昇し、やがて均衡するようになると考えます。別の表現で言えば、「労働供給」が適切になされるまで、実質賃金が上がっていくはずだ、ということです。
今度は、上図において、実質賃金がW2の水準にあるとしますと、働きたいと考える人の数はW2Dで、企業が雇用したい労働者の数はW2Cになり、このとき、労働市場はCDに相当する供給超過の状態であると言えます。要するに失業が存在する状況で、この場合、市場メカニズムの働きによって、実質賃金がW*の水準まで下落し、やがて均衡するようになると考えます。そして、もし、W*の水準まで下落せずに高止まりするのであれば、それは労働者(あるいは労働組合)が実質賃金の低下に抵抗しているのであるから「自発的な失業」であり、または「一時的な失業(→摩擦的失業といいます)」である、と考えます。

1929年に始まった「世界恐慌」の真っ只中の1936年、ケインズの著書・『雇用と利子とお金の一般理論』が発刊されます。




その著書では、その冒頭から「古典派」の考え方に対する批判がなされます。
ここまで御覧頂いたように、「古典派」では、「名目の賃金(W)」を「生産物価格(P)」で除した「実質賃金(率)」に依拠した考え方となっています。
実質賃金(率) = 名目の賃金(W)/生産物価格(P)
それに対して、ケインズは、次のように主張します。大不況の真っ只中にあって、現実に世の中を見てみると、今の賃金で働きたいのに働くことができない人々が数多く実在しているが、それを「古典派」は労働組合が賃金の引き下げに応じないためだと主張している。
この「古典派」の考え方に対して、2つの反論がある。
実質賃金(率)↓ = 名目の賃金(W)↓/生産物価格(P)
名目の賃金が減る(=実質賃金も減る)と働かない、という労働者がいたとして、
実質賃金(率)↓ = 名目の賃金(W)/生産物価格(P)↑
その労働者は、インフレ(生産物価格の上昇)で賃金の実質的な価値が目減りすれば、働くのをやめるとお考えですか?そんな馬鹿なことはないでしょ(笑)
労働者は、自分の給料が下がる(=名目の賃金の引き下げ)と怒るけれども、インフレによって給料の実質的な価値が相対的に下がる(=実質賃金の低下)ことで文句を言ったりはしない。インフレで物価が上昇すれば、労働者たちが一斉に仕事を放り出して退職するって言うの?
つまり、労働供給曲線を示す函数(関数)が、実質賃金だけに依拠しているために、不正確であり、別の新しいモデルとなる函数(関数)が必要であるということだ。

もう一つの反論は、労働の「実質賃金」が、労働者(労働組合)と企業との賃金交渉で決まる、とする「古典派」の考え方に対してのものだが、
実質賃金(率)? = 名目の賃金(W)↕/生産物価格(P)
交渉で決めるのは、あくまでも名目の賃金でしかなく、それが、どうして実質賃金を決定するというのか?これについても、本当に実質賃金を決定するものが何であるのかを考え直す必要がある。
と、ケインズの主張は、こんな感じになります。

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