2019-07-17 (Wed)

本日のキーワード : 生活困窮者、過激思想
生活困窮者(せいかつこんきゅうしゃ)とは、収入や資産が少なく、生活に困っている者を表す用語である。
本日の書物 : 『経済で読み解く日本史⑤ 大正・昭和時代』 上念司 飛鳥新社
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 【ヴィクトリア均衡期】におけるイギリスでは、今のような【労働者保護の法制度はありません】でした。

そのため、【デフレによる物価下落に対応】して、【今とは比較にならないぐらいのコストダウン施策が実施され】ました。【極端な賃金カットや労働条件の悪化は、何の抵抗もなく即座に実行された】のです。こうして、【デフレの悪影響】は【主に労働者に付け回され、社会的な不満は鬱積(うっせき)】していきました。【マルクス】が【人気を博したのはこういった背景によるもの】です。

しかし、【マルクスの主張】はなんと【完全に間違っていました】。

【不況】は資本主義の限界によって起こるものではなく、【政策判断のミスによって起こっていた】からです。【イギリスの不況の原因】は【デフレ】であり、【デフレの原因】は【貨幣量の不足】にありました。そして、【その貨幣量の不足をもたらしていたのは金本位制】です。【問題はあくまでも金本位制にある】のであって、資本主義そのものに問題があるわけではありません。この点は誤解しないようにお願いします。

賃金カットやサービス残業などは、この時期に限らず【平成不況の日本でもよく見られた話】です。【経済政策のミス】によって【労働者が犠牲になる】ということは、今でも昔でもよくあることでした。

当時イギリスの後を追いかけていたヨーロッパ諸国においてもこれは例外ではありませんでした。イギリスの後追いをして【金本位制を採用した欧米列強諸国】は【相次いで景気が悪くなり、失業率が上昇した】からです。
景気が良くて仕事が順調なら、誰にも見向きもされなかったであろう【社会主義思想】は、【デフレのおかげ】でイギリスだけでなく【全ヨーロッパの労働者を惹きつけました】。リーマンショックの直後に、日本で政権交代が起こり、民主党政権が成立したように経済的に困窮した人々は極端な考えにすがりついてしまうのです。
これが、【デフレ派】が【礼賛】する【ヴィクトリア均衡】の実態です。労働者にデフレのツケを擦(なす)り付けるこの時代が本当に【「良いデフレ」なのでしょうか】?』

古典派経済学の2つの公準
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、私たちの日本の歴史を、経済・金融の面を切り口としてみた場合、これまで学校の授業でお勉強させられ、「訳の分からない歴史」でしかなかったものが、普段の日常感覚で国史の流れをスッと、いとも簡単に理解できる、という良書で、また、多くの方々が勘違いしていると思われる「おカネ」というものについて、非常に正しい認識ができるようになる、お薦めの書物の第4巻になります。

さて、先日のところで書かせて頂きましたように(→江戸時代のデフレ・レジームに風穴を開けた「藩札」)、比較的新しい学問である経済学において、1930年代から1960年代まで、その「主流派」の地位にあったのが「ケインズ学派」になります。

ジョン・メイナード・ケインズ
「ケインズ学派」が「主流派経済学」と成り得たのは、「世界恐慌」という時代背景があったからでした。
「古典派」や、それに取って代わった「新古典派」と呼ばれる経済学の学派では、「失業」の取り扱いにおいて、「長期における非自発的失業が存在しない状況を基本」としています。つまり、一時的な失業者が存在していたとしても、長期で見た場合、市場の調整機能が働くことで、失業者は自然に無くなるはず、とする考え方です。要するに、失業者を放置したままにするわけです。
「古典派」にも「新古典派」にも属さない、「オルタナティブ学派」と呼ばれる学派の一つである「ケインズ学派」が、「主流派経済学」(Mainstream economics)の地位を占めるに至った理由が、この「失業」の捉え方の違いにあったというのが非常に重要なポイントになります。




1936年、ケインズの著書・『雇用と利子とお金の一般理論』が発刊されます。
その冒頭で、ケインズは、「古典派経済学」を批判し、その理論の前提を問題視します。「古典派」というのはアダム・スミスに始まり、デヴィッド・リカードによって発展し、カール・マルクスが受け継いだ流れです。まあ、マルクスは、何を勘違いしたのか、トンデモな方向へ理論展開していくのですが(笑)

ケインズは、「古典派」の理論は、ある特殊な環境を想定した場合における「解」を示しているだけに過ぎず、より「一般的な理論」を展開する必要があると主張します。要するに、何の役にも立たない机上の空論のような経済学ではなく、もっと現実の経済を論理的に説明でき、実際に役に立つような経済学であるべきだと言ったわけです。
そして、「古典派」の「失業」の捉え方に対して、痛烈に批判し、「非自発的失業」は明らかに存在しているし、世の中の人々は「実質値」ではなく「名目値」に対して反応するものであり、それらを無視する(=考慮しない)「古典派」の論理展開は奇妙であると言わざるを得ない、と主張します。
そして、最も重要なのが「有効需要」(Effective demand)であって、それこそが「雇用」(Employment)を決定するものであって、それは「消費性向」(propensity to consume)によって左右され、また、「投資」(investment)も「金利」(rate of interest)によって左右されるけれども、これまでの「古典派」では、こういったことを考えもしないが、「一般理論」ではそれらをキチンと検討する、と狼煙(のろし)をあげたわけです。

ここまでのところで、恐らく、難しい(というか、良く分からない)と感じられる方々も多くいらっしゃるのではないかと思いますが、ケインズの主張の重要なところは、それまでの「古典派」や「新古典派」の「失業」に関する捉え方に異を唱えた点にあります。
「古典派」が想定していた2つの公準として、次のものがあります。
① 賃金は労働の限界生産力(量)に等しい
② 一定量の労働が雇用されている場合、賃金の効用は、その雇用量の限界負効用(負の限界効用/marginal distiliky)に等しい
「効用」(utility)というのは、満足度と読み替えると分かりやすいと思いますが、「限界負効用」は「安月給でこんな仕事なんかやってられない!」っていう部分のことを指します。
ここで、総生産量を「Y」、総生産性を表す変数を「A」、資本投入量を「K」、労働投入量を「L」として、「生産関数」を次の式で表すこととします。
Y = A・F(K,L)
「資本の限界生産力」(marginal product of capital:MPK)は、資本投入量(K)をちょこっとだけ増やした時に、生産量(Y)がどれだけ変化するかを表す数値で、次のように表すことができます。
ΔY/ΔK
ある生産システムで、一定のレベルに達すると、入力を増やすほど出力がそれほど増えず、逆に生産コストが増加していくという仮定を、「収穫逓減」と呼びますが、限界生産力逓減の法則に従うとすれば、「生産関数」が示す資本投入量(K)と生産量(Y)の関係は次のようなグラフに表すことができます。

資本投入量(K)をちょこっとだけ増やした時に、生産量(Y)がどれだけ変化するか、つまり「微分積分学」に基づく考え方ですが、それによって表される「資本の限界生産力」(MPK)は、以下のようなイメージで理解してください。

同様に、「生産関数」が示す労働投入量(L)と生産量(Y)の関係は次のようなグラフに表すことができます。

さきほどの「資本の限界生産力」(MPK)のイメージと同様に、今度は「労働の限界生産力(MPL)」をイメージすると、次のようになります。グラフが右に行くほど、ΔYの値の変化が、だんだんと小さくなっていくことが理解できると思います。つまり、「収穫逓減」によって、ある一定のレベルに達すると、労働投入量(L)を増やせば増やすほど、生産量(Y)がそれほど増えず、逆に生産コストが増加していく、ということを示しています。

で、「労働の限界生産力」(MPL)は、労働投入量(L)をちょこっとだけ増やした時に、生産量(Y)がどれだけ変化するかを表す数値で、次のように表すことができるわけですが、
ΔY/ΔL
それをグラフに示しますと、次のようになります(上のグラフのΔYを繋げただけのものです)。

さて、ここで、企業がどれほどの労働力を雇いたいのか、ということを考えるために、次の仮定を置きます。
① 資本の投入量は一定
② 労働者の行動は一律
③ 労働市場は競争的
④ 企業は利潤の最大化を目指す
このとき、企業は、「利潤の最大化を目指す」ことになりますので、労働者を雇用したときの収入、つまり、名目の「生産物価格(P)」と、雇用に伴うコスト、つまり、「名目の賃金(W)」との差である利潤を最大化するように、合理的な労働需要量を決めます。「名目の賃金(W)」を「生産物価格(P)」で除したのが「実質賃金(率)」で、
W/P
企業は、この「実質賃金(率)」に「労働の限界生産力」(MPL)が等しくなるまでは、労働力を雇う、と考えられ、次の式で表すことができます。
MPL = W/P
これが、「古典派」が想定していた公準の、
① 賃金は労働の限界生産力(量)に等しい
であり、ケインズも、これには同意を示しています。

ちなみに、物価が上昇しなければ(デフレであれば)、「実質賃金」は企業が雇用を守るうえで高すぎる水準となり、そうなってくると、リストラなど雇用の不安定化を生じることになります。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆デフレ不況を抜け出す解決策 ~ それと真逆の愚策 「消費税増税」

本日はここまでとさせて頂きますが、ケインズが問題があるとしたのは、「古典派」が想定していた、もう一つの公準になります。
続きは次回に♥
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