2019-07-15 (Mon)

本日のキーワード : 貨幣数量理論
貨幣数量理論(かへいすうりょうりろん、英: quantity theory of money)とは、社会に流通している貨幣の総量とその流通速度が物価の水準を決定しているという経済学の理論。物価の安定には貨幣流通量の監視・管理が重要であるとし、中央政府・通貨当局による通貨管理政策の重要な理論背景となっている。
本日の書物 : 『経済で読み解く日本史③ 江戸時代』 上念司 飛鳥新社
戦後の日本人は、正しい歴史を学校で教わって来ませんでした。
そして、現代のメディアもまた、嘘の情報を流し続けています。
私たち日本人は、親日的な立場に立ち、正しく認識し直し、
客観的に情勢を判断する必要があります。
それでは、この書物を見ていきましょう!
『 本来であれば、【「中央政府」または「中央銀行」】が全国的な物価統計に基づいて【貨幣量を調整すべき】ですが、江戸時代にそれを期待するのはあまりにも酷です。
第一部で見た通り、【「通貨発行益(シニョレッジ)」】の意味を理解している幕閣ですら少数派でした。まして松平定信のような守旧派の頭の悪い人間に、【物価と貨幣量の関係(貨幣数量理論)】を理解するのは不可能でした。

松平定信

岡本薫明(おかもと しげあき)
そんなとき、【一石二鳥の解決策】を思いついた人がいます。幕府は諸藩に徴税権を認めていましたが、通貨発行権についてはかなりあいまいな部分がありました。その虚を衝いて、【財政問題と貨幣不足の問題を一挙に解決するソリューション】が“発明”されたのです。それが【「藩札(はんさつ)」】です。【これが幕藩体制という、デフレ・レジームに風穴を開けました】。

藩札の発行の歴史は古く、1661(万治4)年に福井藩が幕府の許可を得て発行したのが最初と言われています。【藩札の信用を担保】するのは【金貨、銀貨との兌換(だかん)】です。ただし、幕府が金の保有残高を重視していたために、【大抵の藩札は銀札(銀との兌換を保証する紙幣)】でした。

備後福山藩が享保15年に発行した藩札
当時、【東日本は金貨、西日本は銀貨】をメインで使用していたため、【藩札の発行は当初西日本に集中】していました。しかし、1700年代中頃になると貨幣経済の発達で慢性的な貨幣不足が発生し、なおかつ諸藩の財政悪化が深刻になってきました。結局、藩札は【全国的に普及する】ようになりました。

むしろ金貨、銀貨の取引は江戸、大坂、京都といった幕府直轄の大都市だけで、【地方の諸藩における日常的な決済手段はほとんど藩札】になっていました。【藩札の裏付け】となる資産は、【金、銀、銅銭、米など多様化】していたことも付記しておきます。…
【藩札】は【領内限定の紙幣】なので、領民が旅行や仕入れなどで【藩外】に行くときは【「共通通貨」である金貨や銀貨などに両替しておく必要】がありました。
さて、ここで何か気づきませんか。

現在、私たちは【外国に行くときに日本円を外貨に両替】して持っていきます。これとほぼ同じ感覚で金貨や銀貨に両替したり、されたりして使われていたのです。

藩によって藩札が異なるいわゆる「札違い」が一般化し、異なる藩の藩札を交換するときは裏付けとなる資産との交換レートから【「為替レート」】を導き出すことも可能でした。』

「古典派」・「新古典派」 VS 「オルタナティブ学派」
いかがでしょうか?
今回ご紹介させていただく書物は、私たちの日本の歴史を、経済・金融の面を切り口としてみた場合、これまで学校の授業でお勉強させられ、「訳の分からない歴史」でしかなかったものが、普段の日常感覚で国史の流れをスッと、いとも簡単に理解できる、という良書で、また、多くの方々が勘違いしていると思われる「おカネ」というものについて、非常に正しい認識ができるようになる、お薦めの書物の第3巻になります。

さて、本文中に、物価と貨幣量の関係を示す理論である「貨幣数量理論」(Quantity theory of money)が登場していましたが、本書シリーズの肝とも言える部分の一つになります。
「経済学」( economics)は、比較的新しい学問で、18世紀のアダム・スミスは哲学者であり倫理学者という、いわゆる「文系」の学者でしたが、国家経営において、「経済」を軽視してはならない、ということを著書『国富論』で主張しました。

そのアダム・スミスの理論を発展させたのが、「近代経済学の創始者」とされるユダヤ人のデヴィッド・リカード(1772年~1823年)で、ここに、イギリスの経済学者を中心に発展した経済学である「古典派経済学」(イギリス古典派経済学あるいはリカード学派とも)が誕生します。ちなみに、カール・マルクスも、この古典派経済学の系譜になります。この「古典派経済学」の理論として知っておきたいのが、「財の価値が“労働”によって定まる」とする「労働価値説」になります。

19世紀の後半になると、それまでの「文系の経済学」に、「数学(微分学)」を用いる流れが生じ、「財の価値は効用(消費者の満足度)によって決まる」という「限界効用(Marginal utility)」の概念が登場することになり、以降、「古典派経済学」に取って代わって、「新古典派経済学」として発展していくことになります。
詳しくはこちらをご参照💗
↓
☆「文系の経済学」と「理系の経済学」 マルクス経済学はどっち?

☆「無能な学者」でも有名大学に職を得られる「穴場」 ~ マルクス経済学

で、その「新古典派経済学」は、大きく英米を中心とする流れと大陸ヨーロッパを中心とする流れの2つがあります。これについては、また別の機会に書かせて頂きますが、分かりずらい「経済学の派閥」を理解して頂くために、大まかな流れだけを知っておいてください。
さて、ここが非常に重要なのですが、「古典派」も、それに取って代わった「新古典派」も、「失業」の取り扱いにおいて、「長期における非自発的失業が存在しない状況を基本」としています。つまり、一時的な失業者が存在していたとしても、長期で見た場合、市場の調整機能が働くことで、失業者は自然に無くなるはず、とする考え方です。

比較的新しい学問である経済学において、「主流派経済学」(Mainstream economics)とされる「学派」の地位は、その時代によって移り変わっているのですが、1930年代から1960年代まで、その「主流派」の地位にあったのが「ケインズ学派」になります。

ジョン・メイナード・ケインズ
「古典派」にも「新古典派」にも属さないものを、「オルタナティブ学派」と呼びますが、「ケインズ学派」もそこに属していたにもかかわらず、「主流派経済学」(Mainstream economics)の地位を占めたことがあったというのがポイントになります。
学問というものは、その時代の要請によって発展していくものですが、「ケインズ学派」が「主流派経済学」と成り得たのも、まさに、「世界恐慌」という時代背景があったからと言えます。
さて、それは、何故でしょうか?

詳しくは、次回以降に書かせて頂きますが、こちら(↓)の書物を御覧頂ければ、容易に御理解頂けると思います。




それでは、本日の最後に、「おカネ」というものが“何なの”かを考えるために、御覧頂きたい良書をご紹介させて頂きたいと思います。

ミヒャエル・エンデ
『 1989年、西ドイツ・ミュンヘンで、初めてエンデと会った印象は強烈でした。エンデに、NHKスペシャル『アインシュタイン・ロマン』の案内役を引き受けてもらうための出会いでした。取材をはじめると、エンデはあっさりと、アインシュタイン神話を否定しはじめました。私たちは、一人で相対性理論を発見したアインシュタインを憧れのスーパースターだと考えていました。そこでエンデに同意を求めました。
「アインシュタインが原爆投下を知って『オーヴェー(ああ悲しい!)』と叫んだのは、悲痛な怒りの言葉ですね」
と。しかし、エンデはこう答えたのです。
「そうかもしれませんが、ドイツ人は財布を落としたときにも『オーヴェー』と言いますからね」
特殊相対性理論が核エネルギーを予言し、アインシュタイン自身が、核兵器開発を進めるルーズベルトへの手紙にサインした事への強烈な皮肉でした。
「科学技術は何をしてもいいのではなく、その結果に対する責任がある」。
これがエンデの姿勢でした。最初は戸惑いましたが、常識はまず疑ってみるという、エンデらしい発言だと感じるようになりました。
その時、エンデが本当に考えていたのは、『お金の正体』でした。そこで見えたことは、お金が常に成長を強制する存在であることです。科学とお金は共通点があります。現状に満足することがなく『科学は進歩』を、『お金(資本)は成長』を追い求める点です。それが誰も疑わない現代の神話です。』

続きは次回に♥
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